近視進行抑制点眼薬が前進|診察・検査費が保険適用へ【2026年6月予定】

昨年、「近視の進行にブレーキをかける目薬が国内で承認!」という記事で、近視進行抑制点眼薬が日本で承認されたことをお伝えしました。そのなかで「子供の未来のために保険適用を願う」と記しましたが、今回、近視治療を取り巻く環境が大きく前進するニュースが報告されましたのでレポートします。すでに始めておられるご家庭にも、「関心はあるけれど、すべて自費診療なのがネック」と二の足を踏んでおられたご家庭にもお届けしたいと思います。

診察・検査費が保険適用に

厚生労働省は2026年6月から、近視の進行を抑える目薬「リジュセアミニ」を処方する際の診察・検査費を、公的医療保険の対象とする方針を示しました。

対象となるのは、参天製薬の近視進行抑制点眼薬 「リジュセアミニ」 の処方に伴う、

  • 診察
  • 視力検査
  • 屈折検査など

通常の眼科診療と共通する部分です。

国の制度としては自己負担3割で受けられるようになりますが、保険適用になったことで、都道府県・市区町村で実施されている「子ども医療費助成制度」の対象となる可能性が高くなります。その場合、多くの自治体では検査費用と診察費用の自己負担は実質的に生じないと考えられます。ただし、自治体ごとに運用に差があるため、確認が必要です。

【重要ポイント】何が変わるのか?

ここで、誤解しやすい点を整理します。

  • ❌ 薬剤費(点眼薬そのもの)は引き続き保険適用外
  • ⭕ 診察費・検査費のみが保険適用

現在は、点眼薬を処方してもらうための診察・検査もすべて自費扱いとなり、年間6~7万円程度かかるケースが少なくありませんでした。今回の制度変更により、治療にかかる総額の負担は確実に軽減されることになります。

「選定療養」という位置づけ

今回の対応は、「全面的な保険適用」ではなく、「選定療養」という枠組みが使われます。
この枠組みは、以下2つの要素より構成されます。

基本的な医療(診察・検査)は保険でカバー

付加的・先進的な部分(今回の場合は点眼薬)は自己負担

近視進行抑制治療が、「特殊な自由診療」から「保険診療と併用される標準的選択肢」に一歩近づいたと捉えると分かりやすいでしょう。

なぜ今、この動きが重要なのか

背景には、日本でも裸眼視力1.0未満の子どもが増え続けている現状があります。世界的に、近視発症の低年齢化と近視人口の増大が社会的課題として問題になっており、国によっては国家政策として近視予防に取り組んでいます。

その理由は、近視は単なる「視力の問題」ではなく、近視が強くなるほど、網膜剥離、緑内障、黄斑疾患群などの重い目の病気にかかるリスクが高まる事実がある「目の健康の問題」だからです。これは、その子の将来の人生を左右しかねないリスクと言えます。

そのため、「進行をできるだけ早い段階で抑える」という考え方が、日本においても国レベルで重視され始めていることが伺えます。

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保護者の方へ

今回のニュースは、近視進行抑制に関心はあったが、費用面で踏み出せなかったというご家庭にとって、治療を検討しやすくなる大きな後押しになるはずです。

我々医師も、各ご家庭にリジュセアミニ点眼を勧めやすくなりました。

この政策をきっかけとして、

  • 近視進行を抑制する他の治療

    すなわちオルソケラトロジー(普及)、ワンデーコンタクト“マイサイト”(認可済み)、近視管理眼鏡(審査中)などにも関心を持つご家庭が増えること

  • 近視の発症を予防したり、近視の進行にブレーキをかける生活習慣

    すなわち日中の十分な屋外活動と近業時間のコントロールに関心を持つご家庭が増えること

など、望ましい副産物が生まれることを期待したいと思います。

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まとめ

  • 近視進行抑制点眼薬「リジュセアミニ」の処方に伴う診察・検査費が保険適用へ(2026年6月予定)
  • 薬剤費は引き続き自費だが、全体の負担は軽減
  • 近視対策が「特別な治療」から「現実的な選択肢」へ前進

今後も制度の詳細や運用が明らかになり次第、このコラムで分かりやすくお伝えしていきます。

この記事を執筆した医師

株式会社Personal General Practitioner代表取締役社長/医学博士・眼科専門医

板谷 正紀

京都大学医学部卒業。以後20年間、京都大学および米国ドヘニー眼研究所で網膜と緑内障の基礎研究と臨床、手術に取り組む。 京都大学では眼底の細胞レベルの生体情報を取得する革新的診断機器「光干渉断層計(OCT)」などの開発と普及に貢献する。 複数の産学連携、医工連携プロジェクトを企画推進し、2003年文科省振興調整費「産官学共同研究の効果的推進」に選ばれる。 医師でのキャリア35年。増殖糖尿病網膜症や増殖硝子体網膜症、緑内障などの難症例の手術治療を得意とする。

英語論文148報(査読あり)
著書『OCTアトラス』、『OCT Atlas』、『Everyday OCT』、『Myopia and Glaucoma』、『Spectral Domain Optical Coherence Tomography in Macular Diseases』
株式会社Personal General Practitioner(PGP)https://pgpmedical.com

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