検査方法を知る
眼の検査の重要性とは
私たちは何気なくものを見ていますが、今目の前の鮮明な視界は、精巧な眼の機能が正常に働いて得られています。眼の機能のどこかに疲労や問題がでると、ぼやけやかすみ、歪んで見える、ものが二重に見えるなど、さまざまな異常が視界に生じます。
この見え方の異常を測定する方法には、視力検査・視野検査・両眼視機能検査などがあります。見え方の異常には必ず原因があり、その原因を突き止めるための検査には、屈折検査・細隙灯検査・眼底検査・眼位検査などがあります。このように目の検査とは、「見え方に異常がないかを調べる検査」と「見え方の異常の原因となる眼の構造や機能に異常がないかを調べる検査」に大別できます。
液晶を見る時間が長くなったIT社会では、眼の健康の重要性が高まっています。眼の病気は予防できたり、早期発見により視力を守れる病気が多くあります。定期的に眼の検査を受けて眼の健康を守る意識が必要な時代になったと言えるでしょう。
初期検査項目
屈折検査
屈折検査とは、屈折異常を調べる検査です。屈折異常とは近視と遠視、加えて乱視のことを言います。
屈折検査ではまず、オートレフラクトメーターという機器で自動的に測る「他覚的屈折検査」を行い、おおよその屈折異常を把握します。眼科に行くと、最初に小さな機器の前に座り顎台に顎を乗せると、中に道路と気球が見える、あの検査です。
その結果をもとに、視力表と検眼レンズを用いて視力検査を行います。患者さん自身が見え方を答える検査であるため視力検査「自覚的屈折検査」とも言います。
このオートレフラクトメーターがないと、視力検査は当てずっぽうに検眼レンズを選んで行うことになり、時間がかかるうえ、不正確になりやすいと言えます。屈折検査はメガネやコンタクトレンズの処方に必須な検査です。また、患者さんの矯正視力を知るためにも必須となり、矯正視力がでにく場合、目の病気の可能性があるため重要です。
視力検査
視力検査には、「裸眼視力」と「矯正視力」があります。
裸眼視力は、レンズによる矯正を一切行わず、視力表を大きい指標から小さい指標へと答えていき、3回中3回とも正解できる最も小さい指標を見つけます。それが裸眼視力になります。
矯正視力は、レンズで矯正を行って得られる最高の視力のことです。オートレフラクトメーターでおおよその屈折異常を把握して、それを参考にして実際に矯正する検眼レンズを用いて矯正し、視力表を用いてどこまで見えているかを調べます。
例えば、オートレフラクトメーターで「-2.5D*」という近視とでたら、視力検査では「-2.5D」の検眼レンズを用いて視力表を答えます。前後の「-2.75D」や「-2.25D」でも検眼してより良く見える度数を見つけ出します。「-2.5」と「-1.75」より「-2.0」の方がよく見えたら、それが矯正視力で、屈折異常は「-2.0」の近視ということになります。つまり矯正視力は、最高の視力とともに正確な屈折異常を求める屈折検査でもあるのです。
眼圧検査
目に「圧」があることを不思議に思われるかもしれませんが、眼球はその名の通り球体で出来ているため、「圧」が存在します。
眼球の中は「房水」や「硝子体液」などの水分で満たされています。常に新しい水分が流入し、古い水分は排出され、”in”と”out”のバランスで眼圧が決まります。
眼圧は水銀柱(Hg)で示され、通常、10mmHg~21mmHgの範囲を正常と見なします。なんらかの原因で、排出が妨げられると”in”と”out”のバランスが崩れ、眼圧が上昇します。
その状態が長く続くと、目から脳へ走っている神経線維が減っていき、目が捉えた視覚情報が脳へ伝わりづらくなり、視野障害が進み「緑内障」になります。緑内障の治療にも眼圧検査は重要です。このように眼圧は目の健康状態を知る検査として、視力検査とともに眼科で頻繁に行う検査です。
細隙灯検査
他人の目、あるいは鏡で自分の目を見つめても、黒目の部分が全体に黒っぽく見えるだけです。これは有色人種の場合で、白人は青や緑の虹彩とその中に瞳孔を見分けることはできます。
しかし、実際は、黒目の部分全体を透明な角膜がドーム状に覆い、虹彩と角膜の間には房水という水分を貯める前房があり、瞳孔の向こうには水晶体があります。
この目の前方部分(前眼部)は肉眼では見分けられませんが、細隙灯を用いると詳細に見分けることができます。診察室(暗室)に入ると最初に行う検査で、「あごを乗せてください」と指示される、あの検査です。
まぶしい光が右目、左目と当てられて終わります。この細隙灯検査は様々な目の病気を見つけることができます。特殊なレンズを用いると、通常は見えない「隅角」や「眼底」を詳細に観察できます。医師の診察の基本のキにあたる検査と言えるでしょう。
精密検査項目
眼底検査
眼底には視覚情報である光を受容し処理する網膜と、網膜が取得した情報を脳へ伝える神経線維が走る視神経乳頭があります。
眼底は脳とつながる中枢神経の一部で、高度な機能を果たすデリケートな組織です。人の寿命は長いため、加齢とともにさまざまな病気が起きる場になっています。
ひとたび病気になると、失明のリスクがある病気が多く、こうした病気は早期発見・早期治療により失明を防ぐことが大切です。そのために必要な検査の一つが、眼底検査です。
眼底検査は、検査用のレンズと倒像鏡や細隙灯などの観察用機器を用いて、眼底を直接観察する検査です。瞳孔は光を当てると縮瞳するため、眼底を広く観察する必要があるときは、点眼薬で瞳孔を開いて眼底検査を行います。まぶしい検査ですが大切な検査です。
画像検査
一般的によく知られている画像検査に、「CT」や「MRI」があります。それぞれ、放射線と磁気を用いて身体の中を画像として映し出します。眼科でもCTやMRIを用いることはありますが、眼球の後ろや視神経など、光が届かない部位の検査にとどまります。
眼科で主となる画像検査はOCTをはじめとする光による画像検査です。光は透明でないと届かない弱点がありますが、高い分解能を持つ長所があります。正常な組織や病変部を細部まで描出できるのは光だけです。
OCTは、前眼部や眼底の断層画像を取得します。短時間で簡単に撮影でき、眼底疾患の診断学に革新をもたらしました。繰り返し検査しても目に害はないため、加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫の治療経過をモニターする基本検査となりました。
走査型レーザー検眼鏡はレーザーで眼底を映し出す技術ですが、網膜の80%という広い範囲を1回で取得したり、造影剤を用いて病変部の変化を動画で観察できたりと眼底疾患の診断に有用な情報を取得できます。
視野検査
人の目は、見つめたところ、すなわち視線の先ははっきり鮮明に見えますが、その周囲は視線から離れるほどぼんやりします。この見える範囲のすべてが視野です。人は左右で180度を超える視野を持っています。
人はまず視野の中のものをおおまかに把握し、視線をいろいろ動かして見たいところを捉えて鮮明に見ます。視線から離れる程ぼんやりするため、そこに視野欠損が生じても気がつきにくいのです。また、右眼に視野欠損が生じても、左目の視野がカバーしてしまい、気がつきにくくなることも多く、緑内障の発見が遅れる理由でもあります。
視野検査は視野欠損の広さ、部位、深さを調べる検査です。病気によって視野欠損のパターンが異なり診断にも有用です。緑内障では治療効果をみるために不可欠な検査でもあります。時間がかかり集中力を必要する検査でもあります。
眼位検査
眼位とは左右の目の向きの位置関係のことであり、正常では同じ方向を向いています。この眼位がズレる状態を「眼位すれ」または「眼位異常」と言い、斜視や斜位がこれにあたります。
眼位検査は、眼位異常を調べる検査です。眼位異常は、乳幼児期では「弱視」や「両眼視機能異常」の原因になり、大人では、ものが二重に見える複視という問題を起こすため、眼位検査は重要です。
両眼視機能検査
両眼視とは、左右の目で見ることにより脳で生み出される立体感や距離感のある見え方をいいます。両眼視のおかげで動きのある活動をうまく行えます。
両眼視機能は生後2ヵ月頃から5歳頃まで発達します。両眼視機能の発達のためには、この幼少児に両目で物を見ることが必要です。斜視や屈折の大きな左右差が原因で両目で見ることが妨げられると両眼視機能は不完全になります。
このため、まず乳幼児期の屈折検査や眼位検査とともに、両眼視機能検査が重要になります。両眼視機能検査は、治療によって両眼視機能が維持または改善したかどうかをモニターするのにも使われます。