近視を引き起こす原因を知る

近視の原因となる遺伝要因と環境要因とは

ひと昔前と違い、近年では近視になる仕組みがかなり明らかになってきました。近視になりやすい原因には「遺伝的要因」と「環境要因」があります。親が近視の場合、子どもも近視になりやすいことが「遺伝的要因」です。一方、屋外での活動時間が短いことや、近くを見る作業時間が長いなどと関係するのが「環境要因」です。生活習慣とも言えます。

「遺伝的要因」と聞くと、親が近視なら子どもが近視になるのは仕方が無いと諦めてしまうかもしれません。しかし実は、屋外での活動時間を十分に取ると、両親が近視でも、両親が近視でない子どもとほぼ同等に近視になりにくくなることがわかっています。この「環境要因」が働くのは、6~15歳の学童期です。遺伝要因は変えられませんが、環境要因は変えることが可能です。環境要因の理解は、学童期の子どもの近視進行予防の第1歩です。

【遺伝要因】親が近視だと子どもも近視になりやすい?

近視のなりやすさが遺伝するのは間違いありません。コンタクトレンズが普及する前は、家族全員がメガネをかけている家庭も見かけたかと思います。

研究が進み、両親のどちらかが近視であると、子どもが近視になる確率は約2倍。さらに、両親が共に近視だと、子どもは5~6倍の確率で近視になることがわかりました*。

では、親が近視だと子どもが近視になるのは「仕方がない」と諦めないといけないのでしょうか?実はそうではありません。

近視というのは、病気のある/ないという「白か黒か」で捉えるべきものではありません。軽い近視から強い近視まで、さまざまな強さの近視がありますが、そのなかでも不便で眼の病気になりやすい「強い近視」を防ぐことに意義があります。

近視家系は、遺伝的に成長期に目の奥行き(眼軸)が伸びやすい性質を持ってます。逆に捉えると、親が近視の場合、その子どもは生まれる前から近視になりやすいということがわかっているわけです。そのため、近視になりにくいライフスタイルと予防により、近視になる前から計画的に眼軸の過度な伸長を抑え、近視進行を予防するチャンスがあると言えます。

現在は、近視のなりやすさに関係する遺伝子を探す研究が進み、近視遺伝子検査が可能となっています**。

*Sydney Myopia Study2004~2005 **Jones LA, et al. Parental history of myopia, sports and outdoor activities, and future myopia. Invest Ophthalmol Vis Sci 2007;48(8): 3524-32. doi: 10.1167/iovs.06-1118. Genome-wide association study in Asians identifies novel loci for high myopia and highlights a nervous system role in its pathogenesis”

**Meguro A, Yamane T, Takeuchi M, Mizuki Net al., Ophthalmology 2020 Dec;127(12):1612-1624. doi: 10.1016/j.ophtha.2020.05.014. Epub 2020 May 16.

【環境要因】近視になる生活環境要因とは?

現在では、「近視の進行と子どものライフスタイルの関係性」が明らかになってきています。

昔から、本ばかり読んでいる子どもはメガネをかけていて、外で遊んでばかりいる子どもはメガネをかけていない、という漠然としたイメージがありましたが、実はその通りなのです。

近視を予防する鍵は、屋外活動を十分な時間行うことです。両親が共に近視の子どもは5~6倍の確率で近視になりやすいとされています。しかし、屋外活動を週に14時間以上(1日にすると2時間以上)行うと、その差が縮まり、近視になりにくくなることがわかっています。屋外活動が1日に1時間長いと、近視の進行が13%減少します。

また、十分な日光を浴びることが近視進行をおさえることもわかってきました。太陽の光を浴びることで網膜にドーパミン(神経伝達物質)がたくさん産生され、近視を抑制すると考えられています。

勉強・読書

過度の近くを見る作業(近見作業)は、近視進行の要因になります。30cm以内に本を近づけて読むと2.5倍、30分以上継続して読書をすると1.5倍、近視になりやすくなるとされています。

しかし、学童期は、脳や心の世界を広げるために勉強や読書が生活の中心であるべきです。勉強や読書の際は、本や教科書を30cm以上離すこと、またそのために良い姿勢を保つことを心がけましょう。近視を過度に心配して、勉強や読書の時間を減らしすぎないように注意してください。

近見作業を行っても、屋外での活動時間を十分に行うと、近視の進行は抑えられます。また、近視進行を予防する治療法を検討することをおすすめします。

スマホ・パソコン

スマホとパソコンはどうでしょうか?最近では、学校教育にパソコンが取り入れられていますし、スマホでゲームやSNSをする時間も含めると液晶画面を見る時間は増えています。

しかし、現代社会において、スマホやパソコンを使用せずに生活することは難しいことでしょう。そのため、スマホやパソコンを使用する際には、次の2つの大切なことをご理解いただければと思います。

液晶画面から30cm以上離れましょう

読書と同じく液晶画面から30cm以上離して使用することが大切です。しかし、スマホは液晶画面が小さいため問題になります。スマホで集中してゲームやSNSをしているとついつい画面を近づけてしまい30cm以上離し続けるのは無理と思いませんか?このため、学童期(8歳~15歳)は、スマホを使う時間を制限する必要があると思います。

ブルーライトの影響を正しく理解しましょう

液晶のブルーライトが悪いイメージを持たれていますが、そうではありません。日光にもブルーライトが含まれ、液晶画面のブルーライトは曇天の時より少ないくらいです。日中のブルーライトは体内時計に必要ですので、日光を浴びないと体内時計に悪影響をもたらす可能性があります。逆に、夜間に液晶画面を見ると昼間と勘違いしてしまい、やはり体内時計が狂ってしまいかねません。

近視になる子どもが増えている理由

時代とともに変化したライフスタイルが、近視の子どもが増えている最大の理由と考えられます。つまり「環境要因」です。特に、iPhoneが日本で使われ始めた2008年以降、この10年でスマホが広く普及しました。そして今では、子どももスマホを所有する時代になりました。

スマホが普及する前から、テレビゲームなど、夢中で近見作業するものはありました。しかしスマホは、普及率・使用時間ともに、テレビゲームの比ではありません。現在のスマホは、ありとあらゆる機能が小さな液晶画面の中に搭載されています。そして高機能化が進むにつれて、その小さな画面を眼に近づけて見続ける時間が長くなってきています。

一方で、都市空間には自由に屋外で遊ぶ十分な場所がありません。さらにこの数年では、新型コロナウイルスの感染予防のため、屋外活動も減りがちです。ますます近視になりやすい環境、ライフスタイルになってきています。このことを私たち大人がしっかりと意識をして、子どものライフスタイル、学教教育、都市設計などを見直していく目線が必要なのです。

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