黄斑疾患

後部ぶどう腫形成が招く黄斑の破綻

黄斑は網膜の中心に位置し、視力を司る重要な部位です。黄斑に病気が起きると、見つめたところが見えなくなる「中心暗点」を生じ、矯正視力が低下します。

強度近視の目の多くは、40歳以降に眼底の中央付近が後方に凹んでいく、「後部ぶどう腫」と呼ばれる変化が生じます。この後部ぶどう腫の中では、網膜とその土台である脈絡膜が異常に引き延ばされるため、黄斑の健康を維持できなくなる障害がさまざまな形で現れます。

この20年で治療法が進歩し、多くは治療可能になりましたが、治療が成功しても元通りの視力にならないことも多いのが現実です。残念ながら治療法がない障害もあります。近視が強度になると、後部ぶどう腫を形成するリスクが高くなるため、できる限り学童期に近視が強くなるのを防いだ方が安全と言えます。

後部ぶどう腫とは

強度近視の眼の90%は、40歳を過ぎてから眼球の後ろの部分の中央が後方へ凹んでいきます(図)*。「後部ぶどう腫」と呼ばれています。

強度近視では学童期に目が前後に長く伸びるため、目の壁3層(内から網膜、脈絡膜、強膜)が全体的に薄くなり、網膜剥離や緑内障の発症リスクは高まります。

後部ぶどう腫は、40歳を過ぎた大人で見られる変化で、元々薄かった網膜や脈絡膜の眼底の中央部分だけが極度に薄くなり、病気を引き起こしやすくなります。

現在のところ、後部ぶどう腫形成を直接防ぐ方法はありません。今できることは、学童期の子どもたちの近視が強度にならないように、国をあげた対策を行っていくことです。地道に学童を持つ親、これから子を持つ方々に、強度近視になることのリスクを伝えていくことが大切と考えています。

*Hsiang HW, Ohno-Matsui K, et al. Am J Ophthalmol. 2008;146(1):102-110.

 

後部ぶどう腫の中で起きる黄斑の病気

後部ぶどう腫の中では、網膜もその土台の脈絡膜も極度に引き延ばされています。大人の目であるためか、網膜や網膜血管は後部ぶどう腫の伸展についていけず、網膜に前や横に引っ張る力が常にかかっている状態であるため、網膜が内部で裂けたり(網膜分離)、剥がれたり(牽引性黄斑剥離)、黄斑の中心に孔が開いたり(黄斑円孔)します。この病態を「近視性牽引黄斑症」といいます。

黄斑円孔に続いて網膜剥離が生じることがあり、「黄斑円孔網膜剥離」になります。近視性牽引黄斑症の治療は手術になります。

網膜の土台である、脈絡膜と網膜の間のブルッフ膜も引き延ばされ限界を超えると、亀裂を生じて出血を起こします。さらにこの亀裂を通り、脈絡膜の新生血管が網膜下へ侵入して出血をきたします(黄斑部出血)。治療は、抗VEGF薬の硝子体内注射になります。

後部ぶどう腫の中で引き延ばされて薄くなった脈絡膜は、ゆっくりと萎縮し始めます。網膜脈絡膜萎縮と呼ばれる変化です。脈絡膜がないと網膜の視細胞は生きていけないため、脈絡膜萎縮が強くなると網膜も変性し、視機能を失います。これが黄斑の中心に及ぶと強い視力障害をきたします。残念なことですが、網膜脈絡膜萎縮に対する治療は確立されていません。

 

網膜は長さが足りず、前方へ引っ張られ、裂けたり(網膜分離)、剥離したり(黄斑剥離)する

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