近視について知る

近視ってなに?

近視とは、「近くはよく見えるけれども、遠くはぼやけて見えてしまう状態」として広く知られています。学童期に近視を発症する傾向が高く、近視の人の多くは学生時代に、「教科書はよく見えるのに、黒板の字がぼやけ始める」という経験をします。これは、ピントが近くに寄りすぎているためです。では、眼の中に何が起こっているのでしょうか?

実は近視とは、”角膜と水晶体で集められた光のピントが網膜よりも前にある状態”と言えます。この現象は、主に学童期に眼球が奥行き方向に伸びすぎたために起こります。このような近視の進行は、”遺伝と生活環境”が深く関係していることが分かってきています。

近視の人の見え方

近視(−5.50) 正視(±0.00)

近視の人に共通した見え方は、「遠くがぼやけて見える」ということです。近視の度合いが強くなるほど、ピントが合う距離が近寄ってきます。

-1ジオプター*の近視の場合は、1メートル前後が最もはっきりと見えます。-3ジオプターの場合は、30cm前後が最もよく見えます。-6ジオプターになると、1メートルも30cmもぼやけてしまい、15cm位に近づけないとはっきり見えません。

若いほど柔軟な調整力があるため、ピントの前後の広い距離がはっきり見えますが、老眼が始まるとピントの距離だけがはっきり見えるという状態になっていきます。

*ジオプター:角膜や水晶体の屈折力の単位のこと。Dと表示され、近視・遠視・乱視の強さの度数を表す。マイナスは近視、プラスは遠視。

眼の構造とは

眼は、ものがはっきり見えるようにできています。ものから反射して放たれる光は、眼の中の「角膜」「水晶体」「硝子体」という透明な組織を通って網膜、特にその中心にある黄斑に届きます。
網膜は、その届いた光の情報を電気信号に変え、視神経を介して脳へ送ることによって、ものを見ています。そのため、ものが見えるためはまず、次の3つが必要となります。

  1. 角膜、水晶体、硝子体が透明であること
  2. 網膜、特に中心の黄斑が健康であること
  3. 視神経が健康であること

そしてものがはっきりと見えるために、4つめに必要なことは、

  1. ピントが黄斑に合うこと

です。光は、角膜と水晶体を通るときに屈折して一点に集光しますが、これを「目の焦点(ピント)」と言います。水晶体は、単に光を屈折させるだけではなく、水晶体の厚みを変えることで屈折力を変えて焦点の位置を変える力(調節力)を持っています。他にも、虹彩は瞳孔の大きさを変えることで眼の中に入る光量を調節しています。

このように眼は、「はっきり見える」ための精緻な仕組みを持っていることがわかります。

近視とはどういう状態なのか

近視とは、眼の奥行き(眼軸)が長くなり、焦点の位置よりも奥に目が伸びて、焦点が黄斑(網膜)よりも前にある状態です。焦点と黄斑の距離が長い(眼軸が長い)ほど、近視が強いことになります。

水晶体には、厚みを変えて焦点の位置を変える力(調節力)があります。近視の程度が軽い間は、その調節力でなんとか焦点を後ろにずらして黄斑に合わせることができます。

特に学童期は調節力が強いため、近視が始まっても最初のうちは調節してはっきり見えています。しかし、常に調節力を働かすことによって疲れやすくなります。さらに近視が進行すると調節力の範囲を越えてしまいます。その結果、ぼやけて見えるようになってしまうのです。

近視が進行しやすい学童期(8歳~15歳)に、学校の視力検査の結果から、「眼科へ行ってください」という用紙を受け取った記憶がある方も多いと思います。これが近視の始まりです。

近視は学童期に進む

人は、生まれたときは眼が小さいため、遠視(=焦点が黄斑より奥にある)であることが多いですが、身体の成長とともに、眼も大きくなることで眼軸が伸びていき、黄斑が焦点に近づいていきます。そして丁度、黄斑と焦点が一致したときに、遠視でも近視でもない「正視」になります。

このときの眼軸の長さは、24mm前後とされています。そこで眼軸の伸びが止まれば正視のままですが、さらに眼軸が伸び続けると近視になります。

眼軸長(眼球の長さ)は生後すぐは約17mm、3歳で22.5mm、13歳でほぼ成人と同じ24mmになると言われています。近視が進むと、眼軸長が24mmを越えて25mm、26mmと伸びていき、26mmを越えると「強度近視」となります(屈折では-6ジオプターに相当)。

このように近視とひと口に言っても、眼軸長の伸びるスピードにより、程度は様々です。そして、近視が強くなるほど眼の病気になりやすくなってしまうため注意が必要です。

強度近視の眼は40歳以降にさらに進行し、病気になりやすくなる

強度近視の眼の90%は、40歳を過ぎてから眼球の後ろの部分に「後部ぶどう腫」と呼ばれるくぼみが形成されていきます。

このため、40歳を過ぎても眼軸長が伸び続け、近視がさらに強くなっていきます。

他にも、強度近視の方が40歳以降に近視が進む原因は、水晶体の核白内障の進行が挙げられます。白内障は手術で元の視力に回復しますが、後部ぶどう腫は視力にとって大切な黄斑の病気を引き起こす大きな問題です。

強度の近視は、眼球の奥行きが過度に伸びた状態で、眼球壁をつくる3層(内から網膜、脈絡膜、強膜)が引き延ばされて薄くなります。このため、網膜剥離や緑内障が発症しやすくなります。

後部ぶどう腫の中は、さらに3層が引き延ばされてとても薄くなるため、黄斑の恒常性が保てず、傷んでしまうのです。

*Hsiang HW, Ohno-Matsui K, et al. Am J Ophthalmol. 2008;146(1):102-110.

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