近視について知る
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近視は、「教科書はよく見えるのに、黒板の字がぼやけて見える」といった症状で気づくことが多い目の状態です。
多くの場合、近視は学童期に始まります。遠くのものがぼやけて見えるのは、目の中で光のピントが網膜より手前にできてしまうためです。では、なぜそのようなことが起こるのでしょうか。
ここでは、近視とはどのような状態なのか、目の中で何が起こっているのか、さらに強度近視になると将来どのような目の病気のリスクが高くなるのかを、目の構造とともに分かりやすく解説します。
目次
近視とは
近視とは、近くはよく見えるのに、遠くがぼやけて見える状態のことです。近視がさらに強くなると手元も見えにくくなります。近視は、多くの場合、小学生で始まり、一部は中学生で始まります。「教科書は読めるのに黒板の字が見えにくい」という症状で気がつくことが多いです。
では、なぜ遠くが見えにくくなるのでしょうか。それは、目の中で光のピントが網膜より手前にできてしまうためです。
目はカメラのように光を集めてピントを合わせています。しかし近視では、角膜と水晶体で集められた光の焦点が網膜の手前にできてしまい、遠くのものがぼやけて見えるのです。
近視の人の見え方
近視の人に共通する特徴は、遠くのものがぼやけて見えることです。近視の度数が強くなるほど、はっきり見える距離はだんだん近くなります。
たとえば、
- -1ジオプター(D) → 約1m
- -3ジオプター → 約30cm
- -6ジオプター → 約15cm
この距離が、その人にとって最もピントが合いやすい距離になります。
※ジオプター(D):眼の屈折力を表す単位。マイナスは近視、プラスは遠視を意味します。
近視でものがぼやけて見える原因
ものがはっきり見える条件とは

私たちが物を見るとき、光は次のような経路を通ります。
- 角膜
- 水晶体
- 硝子体
- 網膜(特に黄斑)
網膜に届いた光は電気信号に変換され、視神経を通って脳に送られます。
この情報を脳が処理することで、私たちは「見る」ことができます。
そして、ものがはっきり見えるためには、次の条件が必要です。
- 角膜・水晶体・硝子体が透明である
- 網膜(特に黄斑)が健康である
- 視神経が正常である
- ピントが網膜に合っている
近視では、4つ目の条件(ピントが網膜に合うこと)に問題があります。
では、なぜピントが網膜に合わなくなるのでしょうか?ピントが合わなくなる原因(近視が起きる原因)として目に起きていることを、次に説明していきます。
近視が起きる原因
近視は眼球が長くなることで起こる

近視とは、眼の奥行き(眼軸)が長くなり、焦点の位置よりも奥に目が伸びて、焦点が黄斑(網膜)よりも前にある状態です。焦点と黄斑の距離が長い(眼軸が長い)ほど、近視が強いことになります。
水晶体には、厚みを変えて焦点の位置を変える力(調節力)があります。近視の程度が軽い間は、その調節力でなんとか焦点を後ろにずらして黄斑に合わせることができます。
特に学童期は調節力が強いため、近視が始まっても最初のうちは調節してはっきり見えています。しかし、常に調節力を働かすことによって疲れやすくなります。さらに近視が進行すると調節力の範囲を越えてしまいます。その結果、ぼやけて見えるようになってしまうのです。
近視は成長期である学童期(6歳~15歳)に始まり、進行していきます。学校の視力検査の結果から、「眼科へ行ってください」という用紙を受け取った記憶がある方も多いと思います。これが近視の始まりです。
学童期に近視が進みやすい理由
近視は特に6歳〜15歳ごろの学童期に進みやすいことが知られています。
人は生後は遠視傾向がありますが、体の成長とともに眼球も成長し眼軸が伸びていきます。これが適度であれば近視にならずに正視(正常な裸眼視力)になります。
しかし、遺伝や生活習慣により、眼軸の伸びが過度に大きくなると、正視を通り越して近視になるのです
近年では
- 遺伝
- 近くを見る時間の増加
- 日中の屋外活動の減少
などが、近視の進行と関係していると考えられています。
強度近視と将来の目の病気
強度近視で起こりやすい病気
強度近視の眼は40歳以降にさらに進行する
強度近視の眼の90%は、40歳を過ぎてから眼球の後ろの部分に「後部ぶどう腫」と呼ばれるくぼみが形成されていきます。
このため、40歳を過ぎても眼軸長が伸び続け、近視がさらに強くなっていきます。
他にも、強度近視の方が40歳以降に近視が進む原因は、水晶体の核白内障の進行が挙げられます。白内障は手術で元の視力に回復しますが、後部ぶどう腫は視力にとって大切な黄斑の病気を引き起こすため重大な問題です。
強度の近視は、眼球の奥行きが過度に伸びた状態で、眼球壁をつくる3層(内から網膜、脈絡膜、強膜)が引き延ばされて薄くなります。このため、網膜剥離や緑内障が発症しやすくなります。
後部ぶどう腫の中は、さらに3層が引き延ばされてとても薄くなるため、黄斑の恒常性が保てず、病気になりやすくなるのです。
【参考文献】Hsiang HW, Ohno-Matsui K, et al. Am J Ophthalmol. 2008;146(1):102-110.
よくある質問(FAQ)
近視は治りますか?
A. 一般的な近視は、自然に元に戻ることはほとんどありません。眼鏡やコンタクトレンズ、あるいは近視矯正手術によって近視を矯正することはできます。近年では、子どもの近視の進行を抑える治療も行われています。
近視は何歳まで進みますか?
A. 近視は多くの場合、学童期から思春期にかけて進みます。一般的には高校生頃までに進行が落ち着くことが多いですが、個人差があります。強度近視の方では、大人になってからも近視が進むことがあります。
近視が強い人はどんな症状に注意すべきですか?
A. 強度近視の方では、網膜や黄斑の病気が起こることがあります。特に、急に飛蚊症が増える、光が走るように見える、視野の一部が欠ける、視力が急に低下するなどの症状がある場合は、網膜剥離などの可能性もあるため、早めに眼科を受診することが大切です。
強度近視になるとどんな病気が起こりやすいですか?
強度近視の人はどのくらいの頻度で眼科検査を受けるべきですか?
A. 強度近視の方では、網膜や黄斑の病気が起こりやすいため、症状がなくても定期的な眼科検査が重要です。一般的には、少なくとも年に1回程度は眼底検査を受けることが勧められます。視力の低下や視野の異常、飛蚊症の急な増加などがある場合は、早めに眼科を受診してください。
近視の進行を予防するためにできることはありますか?
A. 近視の進行には、遺伝に加えて、近くを見る時間の増加や日中の屋外活動の減少が関係していると考えられています。読書やデジタル機器を長時間続けすぎないこと、適度に休憩を入れること、日中に屋外で過ごす時間を意識することが大切です。子どもの近視では、進行を抑えるための治療が行われることもあります。
近視が強いと大人になっても近視が進むことがありますか?
A. はい。強度近視では、40歳以降も眼球の後ろ側が変化して眼軸がさらに伸び、近視が進むことがあります。また、水晶体の変化によって近視が強くなることもあります。特に強度近視の方は、見え方の変化があれば早めに眼科で相談することが大切です。
この記事を監修した医師

株式会社Personal General Practitioner代表取締役社長/医学博士・眼科専門医
板谷 正紀
京都大学医学部卒業。以後20年間、京都大学および米国ドヘニー眼研究所で網膜と緑内障の基礎研究と臨床、手術に取り組む。 京都大学では眼底の細胞レベルの生体情報を取得する革新的診断機器「光干渉断層計(OCT)」などの開発と普及に貢献する。 複数の産学連携、医工連携プロジェクトを企画推進し、2003年文科省振興調整費「産官学共同研究の効果的推進」に選ばれる。 医師でのキャリア35年。増殖糖尿病網膜症や増殖硝子体網膜症、緑内障などの難症例の手術治療を得意とする。
英語論文148報(査読あり)
著書『OCTアトラス』、『OCT Atlas』、『Everyday OCT』、『Myopia and Glaucoma』、『Spectral Domain Optical Coherence Tomography in Macular Diseases』
株式会社Personal General Practitioner(PGP)https://pgpmedical.com
