網膜剥離

近視が強くなると
網膜剥離発症リスクが増える

近視が強くなると、網膜剥離になるリスクは高くなります。一説には21.5倍なりやすいとされます。なぜでしょうか?

近視とは、学童期に目が前後に伸びて、網膜が焦点を追い越してしまうことで起きます。近視が強くなるいうことは、眼球は前後に強く伸びるということであり、このため、網膜は薄くなり、網膜剥離を引き起こしやすい組織的変化が生じると考えられています。この組織学的変化のため、若年期に「網膜円孔」を、青年期~中年期に「網膜裂孔」を生じやすくなります。

近視が強い方は、10代で1度は眼底検査を受けることをお勧めします。網膜円孔も網膜裂孔も、「レーザー光凝固」により孔の周囲を焼き固めて網膜剥離を予防しますが、網膜剥離が起きてしまうと手術が必要になります。できるだけ強い近視になることを防いだ方が良い理由の一つと言えます。

近視が強くなると、網膜剥離に繋がる組織的変化が起こりやすくなる

近視が強くなると、単に目の焦点が近くに来るだけではなく、眼球そのものに組織的変化が生じます。まず、近視が強くなるほど目が前後に長くなるため、目の壁を構成する3層(網膜、脈絡膜、強膜)がすべて薄くなります。

その結果、網膜赤道部に網膜円孔と呼ばれる小さな孔が開きやすくなります。さらには、赤道部の硝子体と網膜の接着部に、「格子状変性」と呼ばれる変性が生じます。

格子状変性は、網膜が薄くて硝子体と変性縁で強く癒着しています。このため、格子状変性内に網膜円孔が形成されることがあります。格子状変性の有る無しにかかわらず、網膜円孔は若年期(10代、20代)の網膜剥離の原因になります。

一方、硝子体は加齢とともに、液化と呼ばれる変化が進み容積が減ります。もともと硝子体は網膜に張り付いていますが、容積の減少とともに離れていきます。そして中年期に、硝子体は網膜の中央部分から急に外れます。この現象は「後部硝子体剥離」と呼ばれ、誰にでも起こりますが、近視が強いほど若年齢(30代や40代)で起こります。

後部硝子体剥離が生じたとき、多くは病気を引き起こしません。しかし、格子状変性がある場合は、その縁が硝子体との癒着が強く、引っ張られて破れやすく、網膜裂孔を形成しやすく網膜剥離になります。

網膜剥離の2つのタイプ、どちらも近視の目で起こりやすい

一般に、網膜剥離の発症は、20代の若年期と50代の中年期に2つのピークがあります。近視が強い目は、硝子体の液化が速いため、若年期は10代も含み、中年期は30代~40代と壮年期と呼ぶべき年齢へとシフトし、相対的により若い年齢で起きます。

若年期は、網膜円孔による網膜剥離です。まだ充実した硝子体が網膜を押さえ込んでいるため、網膜剥離は月単位でゆっくり進み、自分では気がついていないことも多いです。

壮年期は、後部硝子体剥離に伴い網膜が裂けてできる網膜裂孔による網膜剥離で、孔が大きい上、硝子体の液化が進んでいるため、孔の周囲の網膜が強く引っ張られ、日に日に網膜剥離は拡大します(図)。緊急手術が必要になります。

若年期の網膜円孔、壮年期の網膜裂孔は、ともに格子状変性が関係していることが多いです。近視が強い目は、格子状変性が形成される頻度が高く、若年期に格子状変性の有無を調べておくのは有意義です。

黄斑円孔網膜剥離~強度近視の目に起きる特殊な網膜剥離

近視がとても強くなると、「黄斑円孔網膜剥離」と呼ばれる特殊な網膜剥離になることがあります。黄斑円孔網膜剥離は、近視が強い目だけに起きると言っても間違いはありません。

原因は、40歳以降に起きる目の組織的変化にあります。強度近視の眼の90%は、40歳を過ぎてから眼球の後ろの部分に「後部ぶどう腫」と呼ばれるくぼみが形成されていきます(図)*。

このため、40歳を過ぎても眼軸長が伸び続け、近視がさらに強くなっていきます。もともと強度近視では、目の壁3層(内から網膜、脈絡膜、強膜)が薄くなっていますが、後部ぶどう腫形成により眼底中央部分の網膜と脈絡膜がさらに薄くなっていき、いくつかの黄斑疾患を引き起こします。その一つが、黄斑円孔網膜剥離です。

黄斑は網膜の中心部分ですが、中央部分が薄くて機械的力に弱く、孔が開きやすい構造をしています。後部ぶどう腫の中では、網膜の長さが不足状態で、常に孔が開く方向と網膜が剥がれる方向に力がかかっている状態です。限界を超えると孔が開き剥離を生じます。手術で治しますが、通常の網膜剥離より治りにくい網膜剥離です。

*Hsiang HW, Ohno-Matsui K, et al. Am J Ophthalmol. 2008;146(1):102-110.

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