近視矯正の生涯コスト 徹底比較

眼の健康ブログ

眼鏡・コンタクト・オルソK・LASIK・ICL
価格だけで比較すると?

近視の矯正方法には、眼鏡、コンタクトレンズ、オルソケラトロジー(オルソK)、レーシック(LASIK)、眼内コンタクトレンズ(ICL)など選択肢は増えて、自分に合った方法を選べる時代になりました。気になることのひとつは、やはり費用でしょう。どの方法もそれなりにお金がかかります。

ただ、選択にあたって見落としたくないのが「長期的な費用」あるいは「生涯の費用」です。初期費用は安くても、維持費や交換費用が積み重なれば、生涯コストは大きく変わります。

本記事では、日本国内の最新相場をもとに、10年・20年・30年スパンでの生涯コストを試算してみたいと思います。長期的な相場観がイメージできれば、あなたがこれまで目にしてきた価格の意味が、きっと違って見えるはずです。

試算の考え方

自費診療であるため価格幅がある

近視矯正はいずれも基本は自費になります。このため、特に、オルソケラトロジー(オルソK)、LASIK、ICLは、クリニックにより価格幅がかなりあります。メガネは、眼鏡店による違いよりも、フレーム製品やレンズの種類により大きな価格幅が生じます。コンタクトレンズは、メーカーや製品による価格幅とともに購入先(路面店か?ネットか?)による価格差があります。

診察料や検査料も確認する

近視矯正のレンズや手術の費用以外にも、診察費や検査費がかかることを忘れてはいけません。長期的には無視できないくらいに費用がふくらむからです。診察費や検査費が初期費用に含まれている場合も、含まれていない場合もあり確認が必要です。以下に各方法のポイントをまとめます。

メガネ

目に病気があると、直接眼鏡店でメガネを作成できません。眼科受診をして眼科医の署名・印鑑つきの処方箋を取得して眼鏡店に持参が必要です。目に病気が無ければ、大人は直接眼鏡店でメガネを作ることができるため、そうすれば診察費や検査費はかかりません。幼児や学童は、正確な度数のメガネをつくるのが簡単ではなく、時に医療機関でしか使えない調節麻痺剤の点眼薬を使用してメガネの度数を決める必要があり、眼科でメガネ処方箋をつくる方が良いでしょう。子ども医療費助成制度が利用でき無料あるは低額(自治体による)で検査と診察を受けられます。

コンタクトレンズ

コンタクトレンズは「高度管理医療機器」であり、必ず医師の診察と処方が必要です。ここでの費用は健康保険が効きます。包括制で、初診料291点+コンタクトレンズ検査料200点(合計491点)、以降は再診料75点+コンタクトレンズ検査料200点(合計275点)という形になります。1点=10円換算で、3割負担なら初回約1,470円、再診時は約830円の自己負担が目安です。

オルソケラトロジー(オルソK)

オルソKは自由診療であるため、初期費用に「検査料・フィッティング費・一定期間の診察費」を含む場合と、診察ごとに都度支払いが必要な場合があります。定期検査は必須(3〜6か月ごと)で、長期的にみると診察費が積み重なります。ここを「込み」とするか「別」とするかで総コストが大きく変わるため、契約前の確認が非常に重要です。

LASIK

レーシックの初期費用には、術前検査費・手術費・一定期間の術後検診費が含まれるのが一般的です。ただし、術前精密検査だけは別料金(数千円〜1万円程度)としているクリニックもあります。また、長期的な経過観察を希望する場合には、保証期間を超えると再診料や検査費が自費となります。

ICL

ICLも自由診療で、初期費用に検査・手術・術後一定期間の診察がセットになっているケースがほとんどです。ただし、術前の適応検査(角膜内皮細胞検査や眼内レンズ度数計算など)を「別途費用」としている施設もあり、その場合は数千円〜1万円程度追加になります。保証期間終了後は、LASIKと同様に経過観察の診察費が都度かかります。

白内障になったらリセット

いずれは誰でもなる白内障。白内障になる年齢は個人差がありますが、最近では40歳、50歳で白内障手術を受ける方も多いです。白内障手術は、水晶体の中身を眼内レンズに置き換える手術ですが、眼内レンズの選択により近視と乱視を矯正できます。つまり、白内障手術は近視や乱視を矯正できる屈折矯正手術でもあるわけです。ですので、白内障の手術を受けるときは本記事試算の費用はリセットされます。白内障手術を受けた後の費用は、選択する眼内レンズのタイプにより異なってきますが、今回は触れていません。

試算の前提条件(日本国内相場・2025年時点)

  • 価格は2025年時点、日本国内の一般的な相場の中央値(消費税込)を独断で採用
  • 初期費用は治療開始時の一括費用
  • 費用は両眼の合計
  • 維持費は定期検査・ケア用品などを含む
  • 今回は、どの治療もプレミアム版や特殊条件での最安値は考慮せず、平均的な治療モデルにおける試算を示す
  • 結膜炎や角膜疾患などの関連する眼病に対する治療費用は試算に入れていない
  • 理想モデル:年齢による屈折変化なし・老視対策不要・近視戻りなし
  • 現実モデル:コンタクトとオルソKは紛失・破損を考慮。LASIKは近視戻り+老視眼鏡、ICLは老視眼鏡を考慮。手術は30歳で施行を仮定。

生涯コスト比較表(10年・20年・30年)

方法 理想10年 理想20年 理想30年 現実10年 現実20年 現実30年
眼鏡 15 30 45 15 30 45
1weekCL 65 130 195 65 – 66 130 – 132 196
2weekCL 40 80 120 40 – 42 80 – 83 121 – 125
ハードCL 22 44 62 22 – 26 44 – 52 62 – 74
オルソK 73 128 183 76 – 81 135 – 145 197 – 212
LASIK 30 30 30 31 35 42
ICL 65 65 65 67 71 77

単位:万円

〈補足1:中央値の仮定〉

  • メガネ:メガネ1本の費用を3万円(フレーム+単焦点レンズの中央値)として2年ごとに買い替えとした。
  • 1day / 2week(ソフトコンタクトレンズ):1day:1枚=0.009万円、2week:1枚=0.042万円で計算。
  • ハードコンタクトレンズ:1枚=2.0万円で計算。
  • オルソケラトロジー:中間値に両眼約73万円採用。内訳は、初期費用18万+交換5万/2.5年+維持費(診察、レンズケア液・洗浄液など)3.5万/年。
  • LASIK:レーシックの両眼手術費用は、クリニックや術式により幅があるが、一般的な相場は両眼で20〜40万円。中間値として「30万円前後」を採用。
  • ICL:初本記事ではわかりやすさのため『両眼約65万円』を中央値として示しているが、実際には45万〜80万円前後のレンジがある。ただし、乱視用レンズや多焦点機能があるレンズは費用が加算される。事前に見積もり確認必要。

〈補足2:現実モデルの仮定〉

  • メガネメガネの破損頻度について、公的な統計データはほぼ存在しないが、一般的には、スポーツ利用者は『年間1回程度の破損・修理』という報告もあり、使い方によっては、現実モデルはコストが上振れする可能性があります。
  • 1day / 2week(ソフトコンタクトレンズ)薄くて破れやすく、見えにくいため紛失おこりやすい。紛失・破損頻度を0.5〜4枚/年と仮定。
  • ハードコンタクトレンズ 素材が硬いため破損は少ないが、落とす・流すなどの紛失はある程度あるため紛失・破損頻度を0〜0.2枚/年(=10年で0〜2枚程度)と仮定。
  • オルソケラトロジーハード素材に近いことを考慮して紛失・破損頻度を0.1〜0.3枚/年と仮定。保証制度は計算に入れていない。老視眼鏡:2万円/本・5年ごと(30歳開始で45歳以降必要と想定)。50代以降は減少傾向(老視とケアの煩雑さのため)あるが、継続したと仮定して試算
  • LASIK(手術は30歳想定)近視戻りによる再手術率(累積):10年=6%/20年=10%/30年=18%。再手術費の中央値=10万円、老視眼鏡:2万円/本・5年ごと(45歳以降)
  • ICL(手術は30歳想定)Toric位置再調整手術の期待値+1.0万円(1回限り)、レンズ交換/抜去は期待値で10年+0.5万円/20年+1.25万円/30年+2.5万円を加算。残余屈折による遠用眼鏡は常用2%×1.5万円(10年ごと)、老視眼鏡は45歳以降5年ごとに2万円を加算する。

〈開始年齢による費用の見方〉
本記事では10年・20年・30年スパンで費用を試算していますが、これは単なる期間比較ではなく、開始年齢の違いも想定しています。

  • 10年モデル:40〜50代から矯正を始める場合
  • 20年モデル:30〜40代から矯正を始める場合
  • 30年モデル:20〜40代から矯正を始める場合

10代は選択できない近視矯正法があるため想定からはずしています。
開始年齢が遅いほど、老眼の影響を受ける年数が早まり老眼鏡分が上振れすることも留意が必要です。

生涯コスト表をどう読むか?

「定期的コスト型」か?「初期投資型」か?

長期で見ると「定期的コスト型(眼鏡・コンタクト・オルソK)」と「初期投資型(LASIK・ICL)」に分かれます。

定期的コスト型は、長期になるほどコストが膨らんでいくことが明らかですね。
初期投資型は、開始時に高額な費用が発生しますが、長期的にみると相対的にコストが低いことが分かります。

振れ幅に注意

しかし、現実には、計算通りにいかずコストに振れ幅があることに留意しましょう。注意したい5つのポイントを以下にあげます。

定期的コスト型の交換頻度

定期的コスト型は、交換の頻度により生涯コストは変わります。破損や紛失が繰り返されると生涯コストは膨らみます。例外的なのは、1dayコンタクトで、交換頻度は一日と決まっていますし、たとえ破損や紛失があっても損失は小さいといえます。使わない日があるほどコストは低下します。1dayコンタクトは、長期的なコストがいちばん大きいようですが、振れ幅はメガネに次いで小さいといえます。一方、メガネは、試算のように必ずしも2年ごとに変える必要はなく、破損や屈折変化が無ければ何年でも使えますので、交換頻度にいちばん個人差が大きいといえます。

初期投資型はクリニック間とメニュー間の振れ幅が大きい

初期投資型は、手術費用や治療機器の維持費などが含まれるため、クリニックの間での差が大きいです。LASIKは、最新機器によるプレミアムメニューを選択すると上振れします。

初期投資型の修正費用

初期投資型は追加費用が発生する可能性に留意する必要があります。LASIKなら、近視戻りが生じると、再手術を受けたり、コンタクトレンズやメガネが必要になったりすることがあります。ICLは、今のところLASIKに比べて再手術が必要になる頻度は低いようですが、30年という長いスパンでは、加齢による近視や乱視の変化が無視できなくなる人がでてきて再手術や、コンタクトレンズやメガネを検討する可能性があります。

メガネのおしゃれ要素

メガネは、おしゃれの要素もあり、複数持つか否か、ブランドフレームにするか否かなど個人差がとても大きいため振れ幅も大きくなります。

関連眼病の治療費

コンタクトレンズやオルソケラトロジーは、巨大乳頭結膜炎や角膜疾患が生じるリスクがあり、その場合治療費分だけ上振れします。

生涯コスパという視点で試算表を見てみると?

ここまでは、コストだけを追ってきましたが、コスパとなると話は変わります。「コスパ=コスト+パフォーマンス」ですね。「パフォーマンス」は人により価値が異なります。簡単に挙げてみます。

メガネ

長期コストがかなり低いが、メガネが嫌な人にとってはコストの低さは意味をなさない。逆にメガネでおしゃれを楽しむ人はコストが上がる。

1dayコンタクト

長期コストはいちばん高いが、ケアが不要で、比較的目の病気になりにくい安全性があり、安心感という価値がある。

2weekコンタクト

かなりコストを抑えられるが、毎日のケアの手間が大きく、怠ると巨大乳頭結膜炎や角膜潰瘍などの重大な目の病気になるリスクがある。
*詳しくはこちら:時代を映し出すコンタクトレンズ診療パート1

ハードコンタクト

メガネに近い低コストだが、装用感がソフトコンタクトに劣る。

オルソケラトロジー

長期コストが1dayコンタクトなみに高いが、昼間なにもつけずに良く見えて過ごせるという解放感があるが、就寝時にオルソ用コンタクトレンズを付けることに慣れる必要がある。

LASIK・ICL

長期コストは「定期的コスト型」に比べ低コストで、夜も昼もなにもつけずに良く見えるという最高の解放感があるが、初期費用が高額であることと、目にメスを入れる手術を受ける必要がある。

まとめ – 試算から見えてきたポイント

当然のことですが、費用だけで決めるわけにはいきませんね。しかし、決める前に、長期コスト、あるいは生涯コストをイメージしておくことは、後悔のない選択のためには大事なことと考え試算を試みました。
やってみて感じたのは、近視矯正の長期コストの試算は簡単ではないということです。複雑な要素が多すぎるためです。条件を変えたり増やしたりするだけで数字は変わります。あらゆるパターンを網羅したら、50ページくらいになりそうな感触です。ですので、今回の試算は決定版というものにはほど遠く、目安としてみていただければと願います。

ただ、試算を試みてわかったことも少なくありませんでした。なかでも、生涯コストをイメージするには、初期費用・交換費用・維持費の3つをトータルで比較することが重要であることがわかりました。初期費用が安くても交換費用や維持費で長期的にコストが大きくふくらむことがわかりました。
一方、コスパをどう見るかは、個人差が大きいため、ご自分が何を求めているかを問うてみる必要があります。安全性、将来性、利便性も評価軸に入れ、ご自分の仕事やライフスタイルに合うかどうかの視点が重要です。
また、ご自分の目との相性もあります。オルソKやLASIKは強度近視の方には向きません。アレルギー性結膜炎やドライアイが重症だと、コンタクトレンズやオルソケラトロジーが向かないこともあります。

最終的には、眼科医に相談されることもあると思います。ご自分の価値観を医師にはっきりと伝え、目の特徴をしっかり調べてもらい、そのなかからでてきた選択肢を考えるときに、今日の記事もチラ見してみてください。

この記事を執筆した医師

株式会社Personal General Practitioner代表取締役社長/医学博士・眼科専門医

板谷 正紀

京都大学医学部卒業。以後20年間、京都大学および米国ドヘニー眼研究所で網膜と緑内障の基礎研究と臨床、手術に取り組む。 京都大学では眼底の細胞レベルの生体情報を取得する革新的診断機器「光干渉断層計(OCT)」などの開発と普及に貢献する。 複数の産学連携、医工連携プロジェクトを企画推進し、2003年文科省振興調整費「産官学共同研究の効果的推進」に選ばれる。 医師でのキャリア35年。増殖糖尿病網膜症や増殖硝子体網膜症、緑内障などの難症例の手術治療を得意とする。

英語論文148報(査読あり)
著書『OCTアトラス』、『OCT Atlas』、『Everyday OCT』、『Myopia and Glaucoma』、『Spectral Domain Optical Coherence Tomography in Macular Diseases』
株式会社Personal General Practitioner(PGP)https://pgpmedical.com

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