緑内障は予防できる?専門医が解説する「現実的な対策」と失明を防ぐ考え方
「緑内障は予防できますか?」―多くの方が抱くこの疑問は、ひとことでお答えするのが難しい質問です。
まず、その人の目の状態により答えが異なってきます。
また、緑内障はいくつかのタイプ(病型)があり、予防できる緑内障と予防できない緑内障があります。
そして日本人にいちばん多いタイプの正常眼圧緑内障は、実は「予防が難しい」緑内障です。
しかし、できることはあります。
この記事では、緑内障の不安に対して、知識を正しく整理したうえで、専門医の視点で医学的に正しく現実的な対策を解説します。
緑内障は予防できる?答えは「緑内障のタイプによって異なる」
緑内障には、予防できる緑内障と予防が難しい緑内障があります。緑内障のタイプ(病型)ごとに整理して理解することが必要です。
予防できる緑内障
閉塞隅角緑内障
この緑内障は、目に明らかな特徴があるため、防ぐことができます。その特徴とは、目の中を流れる水分である房水(ぼうすい)の出口が狭いことです。この出口を隅角(ぐうかく)といいます。隅角が狭い目は、年齢とともに徐々に狭くなっていき、やがて眼圧が上昇して緑内障になるリスクが高まります。
隅角が狭いかどうかは、眼科の細隙灯検査でわかります。目が良い、つまり、近視がない女性に多い傾向があります。隅角が狭いことが確認された場合は、レーザー治療や手術によって、閉塞隅角緑内障の発症リスクを下げることができます。
※関連記事:閉塞隅角緑内障:目の良い女性は気を付けて!
※参考文献:Ocular Hypertension Treatment Study (OHTS)
【閉塞隅角緑内障を防ぐ治療】

予防できる可能性がある緑内障
高眼圧症(緑内障予備群)

高眼圧症とは、眼圧が正常範囲(10〜21mmHg)を超えているが、緑内障の変化が見られない状態をいいます。眼圧が24 mmHg以上の目を5年間観察したところ、治療をしないと9.5%の目が緑内障になるが、点眼薬で眼圧を20%下げると緑内障になるのは4.5%であったという研究結果があります。
つまり、眼圧が24 mmHg以上の目は、緑内障になるリスクがあり、点眼薬で眼圧を下げると緑内障を防げる可能性が示されています。
続発緑内障
もともと緑内障でない目が、ステロイド使用、目の外傷、ブドウ膜炎や糖尿病網膜症などの目の病気により眼圧が上昇して緑内障になるのが続発緑内障です。
ステロイド使用中は定期的に眼圧を確認することで、眼圧上昇を早期に把握し、続発緑内障への進行リスクを下げる対応ができます。目の外傷や病気の場合は、眼圧が上がる原因を管理し、眼圧が上昇したら薬物や手術により眼圧をコントロールすることで緑内障発症リスクを下げることができます。
予防が難しい緑内障
正常眼圧緑内障
正常眼圧緑内障は、眼圧が正常範囲であるにもかかわらず発症する緑内障です。上記の1と2は、いずれも眼圧が高くなる原因がはっきりしている緑内障であるため、その原因を解除するか、あるいは早めに点眼や手術で眼圧を下げれば、緑内障を防げる可能性があります。
しかし、正常眼圧緑内障は、眼圧が正常ですから、緑内障を発症するまで診断できない緑内障なのです。言い換えると、いつだれがなるかわからない緑内障と言えます。このため、「緑内障は予防できるのか?」という疑問の多くは、正常眼圧緑内障を指していることが多く、さまざまな研究が行われてきました。
【発症予防 vs 進行抑制:タイプ別まとめ】
| タイプ | 発症予防 | 進行抑制 |
|---|---|---|
| 開放隅角 | 〇 | ◎ |
| 正常眼圧 | × | ◎ |
| 閉塞隅角 | ◎ | ◎ |
| 続発 | △~〇 | ◎ |
正常眼圧緑内障は予防できるのか?
日本人の緑内障の約72%は正常眼圧緑内障とされています(多治見スタディー)。
結論から述べると、発症そのものを防ぐ方法は確立されていません。
眼圧を下げると予防できる?

正常眼圧緑内障は、点眼で眼圧を20~30%低下できれば、進みにくくなることが知られています。このため、理論的には、緑内障になる前から、眼圧を下げる点眼を行えば、予防できる可能性はあります。
しかし、現実には難しいと言わざるを得ません。まず、誰が正常眼圧緑内障になるか予測できないため、医学研究で効果を証明することが困難です。
また、予防のためには、期限無くずっと点眼を継続する必要がありますが、緑内障点眼は、副作用があり、お金もかかりますし、手間もかかります。正常眼圧緑内障になるかどうかわからないのに、続けるのは現実的ではありません。さらには、病気ではないので保険も効きません。
生活習慣の改善で予防できる?
生活習慣は緑内障に関係するのか、という疑問は非常に多く聞かれます。緑内障の発症予防と進行抑制に分けて理解する必要があります。
科学的根拠の整理
現在の医学的な整理は以下の通りです。
緑内障の発症予防と進行抑制の医学的結論
- 発症予防:明確な証拠なし
- 進行抑制:一部効果が示唆
進行抑制に有効性がある可能性がある生活習慣
有酸素運動、適度な睡眠、ストレス軽減、禁煙などは、眼圧や視神経の血流に良い影響を与えることがわかっており、科学的根拠は弱いながら進行抑制には一定の関与があると考えられています。しかし、眼圧下降の効果が圧倒的に強く、生活習慣だけで緑内障の進行を抑えることは難しいと言えます。
一方で、「緑内障にならないようにする」効果は証明されていません。
これは生活習慣に効果がないということではなく、発症の研究が難しいためです。緑内障の発症は10〜20年という長い時間をかけて起こるため、研究により明確な結論を出すことが困難なのです。
よくある誤解
よく目にする以下のような内容も、科学的根拠に乏しいため注意が必要です。
緑内障予防に関するよくある誤解
- サプリで予防できる
- 目の体操で改善する
正常眼圧緑内障のためにできる現実的対応とは?
実は、正常眼圧緑内障は、次の2つの視点で考えると、予防的対応は可能であることがわかります。
前視野緑内障の段階で見つけて管理する
緑内障は網膜神経線維が徐々に減少し、30〜50%程度失われると視野異常が現れるとされています。正常眼圧緑内障では、眼圧や視野検査が正常でも、眼底検査やOCTにより神経線維の減少を捉えられる段階があり、これを前視野緑内障と呼びます。ガイドラインでは原則経過観察とされますが、すべてが進行するわけではないためです。
前視野緑内障において、生活習慣が進行を抑制するエビデンスはありません。しかし、緑内障は連続的に進行する疾患であり、進行抑制に有効な生活習慣は前視野緑内障でも有効である可能性があります。さらに、家族歴や強度近視などのリスクがあれば点眼治療が検討され、OCTで進行が確認されれば治療介入が行われます。前視野緑内障は検査で発見可能であり、早期発見が現実的な対策となります。
※関連記事:近視も緑内障も黄斑疾患も見える眼底検査OCT、ご存じですか?
※参考文献:緑内障診療ガイドライン(第5版)
近視予防・近視進行抑制を行う
近視が強いほど緑内障になりやすいことがわかっています。その多くは、正常眼圧緑内障です。近視は、緑内障だけではなく、網膜剥離や黄斑の病気など失明リスクのある眼底の病気になりやすくなると考えられています。このため、世界的に、子ども時代に近視の発症を予防、あるいは、近視の進行を抑制するための対策が練られています。最近では、近視進行抑制効果のある点眼、コンタクトレンズ、眼鏡が実用化されています。
また、日中屋外で過ごす時間を十分に取る、本やデジタルデバイスは30cm以上離して見るという生活習慣も、近視の予防や近視進行抑制に必要であることがわかっています。こうした取り組みにより、子供時代に近視を少しでも軽くすることで、将来の緑内障発症リスクは減らすことができると考えられているのです。
※関連記事:近視の方に知ってほしい、近視の目が持つ緑内障の課題
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まとめ
緑内障には、予防できる緑内障と予防できるかどうか明らかではない緑内障があります。なかでも予防が難しい正常眼圧緑内障は、前視野緑内障の段階で発見することで、視野障害を予防できる可能性があります。また、近視の予防、あるいは近視を強めない進行抑制は、緑内障発症リスクを下げると考えられています。一定の年齢になったら、眼科で目の状態とリスクを把握し、そのリスクに応じた予防的対応をとることが、現実的な予防的対処法と言えます。
よくある質問(Q&A)
眼圧が正常なら緑内障は安心ですか?
A. 安心とは言えません。日本人の緑内障の約7割は「正常眼圧緑内障」と呼ばれ、眼圧が正常範囲で発症します。眼科で眼底の検査と視野検査を受けることが必要です。
緑内障で失明するのが怖いです
A. その不安はもっともです。早期に発見できるほど、視機能を守ることができます。早期発見に努めることが大切です。
結局、何をすればいいのでしょうか?
A. 最も重要なのは、次の2つです。
- 自分がリスクを持っているかを知ること(近視、隅角が狭い、家族歴など)
- 眼科で定期的に検査を受けること
何歳から緑内障の検査を受けるべきですか?
A. 一般的には、40歳以降は年1回の検査が推奨されています。一方で、以下に当てはまる方はより早い段階からの検査が望まれます。
- 強い近視がある
- 家族に緑内障の人がいる
- 眼精疲労や視野の違和感がある
この記事を監修した医師

株式会社Personal General Practitioner代表取締役社長/医学博士・眼科専門医
板谷 正紀
京都大学医学部卒業。以後20年間、京都大学および米国ドヘニー眼研究所で網膜と緑内障の基礎研究と臨床、手術に取り組む。 京都大学では眼底の細胞レベルの生体情報を取得する革新的診断機器「光干渉断層計(OCT)」などの開発と普及に貢献する。 複数の産学連携、医工連携プロジェクトを企画推進し、2003年文科省振興調整費「産官学共同研究の効果的推進」に選ばれる。 医師でのキャリア35年。増殖糖尿病網膜症や増殖硝子体網膜症、緑内障などの難症例の手術治療を得意とする。
英語論文148報(査読あり)
著書『OCTアトラス』、『OCT Atlas』、『Everyday OCT』、『Myopia and Glaucoma』、『Spectral Domain Optical Coherence Tomography in Macular Diseases』
株式会社Personal General Practitioner(PGP)https://pgpmedical.com
