辛い視野検査、実はものすごく大事ってご存じですか?

目の健康ブログ

視力だけではわからないことがわかる視野検査

視野検査を受けたご経験はありますか?「要領がわかりにくい」や「顔を動かせず、一点を見つめ続けるのは辛い!」など、あまり良い印象はないのではないでしょうか?

視野検査は慣れないと少し大変なのは事実。しかし、実は、視野検査、眼科ではむちゃくちゃ重要なんです。視力に並んで重要と言ってもいいくらいです。なぜなら視力検査では見つけられない病気の発見や、視力ではできない緑内障の治療の最適化に欠かせないからです。

今回は、視野検査の意義と重要性についてご紹介します。眼科で「視野検査をしましょう」と言われたときに、目的を理解して、無駄なく、しっかり役立つ検査結果を得るためのお手伝いになればと思います。

視野検査は、視力検査ではわからない目の病気が分かる

視力と視野の違い

視力検査は「どれだけ細かい文字が見えるか」を調べる検査です。言い換えると、視界の中心部の視機能の精密な高さを調べます。
一方、視野検査は、まず「見えている範囲(視野)がどれくらいか」を調べます。また、単に視野の範囲だけではなく、「視野の中の感度の分布」を調べます。これにより、中心ほど感度が高く、周辺に行くほど低い山のような形の視野が描き出されます。視野に異常が出ると、この山の形がさまざまに崩れます。

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視野異常は自分では気が付きにくい

視力が低下すれば、自分で気が付きやすいです。なぜなら、人は常に、見つめる部分は意識しているからです。
ところが、やっかいなことに視野は広いため視野全体への意識は低く、視野の端の方に異常があっても、気が付かないことがほとんどです。このため視野検査をしてみないと視野異常があることに気が付けないことが少なくないのです。

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視力は大丈夫でも視野異常がでる病気とは?

視力は大丈夫でも視野に異常が出る病気、あるいは視野異常で始まり病気が進むと視力が低下する病気などがあります。
それぞれどんな病気があるか挙げてみましょう。

  • 視力は大丈夫でも視野に異常が出る病気

    • 脳の病気:脳出血・脳梗塞や脳腫瘍などでは、出血や脳梗塞あるいは脳腫瘍の場所により、視野が欠けるが視力は正常であることがあります。視野検査の強みとして、視野の欠け方により脳のどの部位に異常があるかがおおよそわかることが挙げられます。
    • 網膜中心動脈分枝閉塞症:閉塞した網膜中心動脈枝が栄養していた部分は視野欠損になりますが、その範囲が視野の中心から離れていて視力は良好なことがあります。
    • 網膜中心静脈分枝閉塞症:同様に、閉塞した網膜中心静脈枝の末梢では網膜出血や網膜浮腫により視機能が低下しますが、その範囲が視野の中心から離れていて視力は良好なことがあります。
  • 視野異常で始まり病気が進むと視力が低下する病気

    • 緑内障緑内障の多くは、中心から離れた部分から視野障害が始まり中心に向かいます。重症になると視力が低下します。
    • 網膜色素変性:この病気は視野の周辺部から障害され、進むと中心にまで及び視力が障害されます。
    • 網膜剥離網膜剥離は、網膜の周辺部に孔が開き、そこから網膜剥離が広がりますので、最初は視野障害で始まり、中心部の黄斑が剥離すると視力が低下します。

視野検査は緑内障治療の中心:視力ではできない治療の強さの最適化

緑内障は視野がゆっくりと欠けていく病気です。40歳以上の20人に1人、60歳以上では10人に1人がかかると言われている病気です。日本の失明原因の圧倒的一位を占めるため、早期発見して早期治療が重要と考えられています。そして、その治療とは、点眼薬や手術で眼圧を十分に下げることにより視野障害の進行をスローダウンすることです。この「十分に」ということが、実は緑内障治療の肝になります。言い換えると「治療の強さを最適化していくこと」です。

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治療の強さとは?

緑内障の点眼薬は10種類以上もあります。効果の高い点眼薬あるいは副作用の少ない点眼薬から開始して、必要に応じて点眼の種類を増やして治療の強さを高めていきます。現実的には、だいたい5種類くらいがマックスで、さらに強い治療が必要な場合は、緑内障手術を行います。このように、緑内障の状態に応じて、治療の強さを決めていきます。

治療の強さの最適化とは?

点眼の種類が増えると、患者さんの手間と経済的負荷と副作用が高まっていきます。緑内障手術は、合併症という問題があります。つまり、治療を強くするほど患者さんにとってはマイナスな面も増えるリスクがあるのです。このため、患者さんの視野を生涯守るために必要かつ十分な治療の強さを決めていくことが緑内障治療の目標なのです。

視野は治療の強さの最適化を決める検査

患者さんの視野を生涯守るために必要かつ十分な治療の強さを決める手段が視野検査です。治療を開始して眼圧が十分に下がったうえで視野検査を定期的に行うと年にどれくらい進んでいるかが読めてきます。このままのスピードで進んだ場合、何歳で生活に支障が出はじめ、何歳ごろに見えなくなるかが予測できます。あくまで予測ですが。100歳で生活に支障が出始め、120歳で見えなくなるという予測になれば、今の治療の強さで十分という判断ができます。一方、70歳で生活に支障が出始め、85歳で見えなくなるという予測になれば、問題ですね。治療を強めて、より進行のスローダウンを目指す必要があります。緑内障の治療は、今だけではなく、患者さんの未来を守る治療であり、その決め手となるのが視野検査なのです。

どういう時に視野検査をするか?

視力検査は眼科ではルーティーンに行う検査です。視力は眼圧とともに、内科の血圧検査のように目の状態を調べる入り口です。

一方、視野検査は時間がかかるため必要な時に行われる検査です。どんな場合に必要になるか挙げてみましょう。

視野検査を行うタイミング

  • 眼底検査で網膜や視神経の病気を疑ったとき
  • 眼底所見と視野障害が一致するか確認します。

  • 視野異常の自覚があるとき
  • ご本人に視野障害の自覚があるときは、視野検査で確かめます。

  • 目のどこにも異常がないのに視力が出ない時
  • 目を調べても異常が認められないが、視力が不良なことがあります。いろいろな可能性があるなかで、視野検査により脳や視神経の病気の可能性を調べることができます。

  • 緑内障の診断と治療
  • 緑内障診断には、眼底の状態と視野障害のパターンが一致することが求められます。治療の最適化に必須であることは上記の通りです。

視野検査には何がある?

視野検査には、ハンフリー自動視野計に代表される静的視野検査ゴールドマン視野計に代表される動的視野検査があります。ほとんどの眼科クリニックは、静的視野計がありますが、動的視野計は無いところの方が多いです。さらに詳しく知りたい方は、以下の表を参考にしてください。

項目 静的視野検査(ハンフリーなど) 動的視野検査(ゴールドマンなど)
主な検査の目的 指標の輝度を変えて、視野の各検査点がどの程度見る力(感度)があるかどうかを調べ数値化する。 指標の大きさと輝度を変えて、見える範囲の輪郭を描き出す。
例えるなら 視野の山の代表点の高さを測定して標高地図をつくる 視野の山の等高線を描き出す
検査の方法 コンピューター自動制御で光の強さと場所を変えて、被験者は見えたらボタンを押す(固定点 検査員が光を中心に向かって動かし、被検者は見えたときにボタンを押す。(移動点
検査時間(片眼) 短い。約5~8分(モードによる) 長い。約15~20分(検査員の熟練度による)
定量性 数値で比較可能。変化を把握しやすい(MD, VFIなど) 定量性はやや劣るが、視野全体のパターンが直感的に分かる
代表的な用途
  • 緑内障の診断、重症度判定、進行評価に最適
  • 右記の脳の病気、視神経の病気、網膜色素変性症にも有用であるが、動的視野検査の方が優れる。
  • 脳の病気の診断や部位特定
  • 視神経の病気の診断
  • 網膜色素変性など網膜疾患の障害の状態を把握
  • 左の緑内障の診断、重症度判定、進行評価にも使えるが、静的視野の方が優れる。

結果は妄信してはいけない

視野検査で異常が出たり、緑内障で視野障害が速く進んでいるように見えても、その結果を鵜呑みにしてはいけません。
視野検査は、いくつかの理由で、目の病気がないのに異常が出たり、緑内障が進んでいないのに視野が急に悪くなったりすることがあるからです。

妄信せずに、なぜこの結果が出たかを解釈する努力が必要です。別日にもう一度検査して再現性を見ることも必要です。視野検査の信頼性に影響を与える要因を挙げてみます。

1. 検査精度が低下

視野検査は、視野に小さな光の点が見えたら自分でボタンを押す検査です。視力検査より複雑で、集中力を必要とし、時間もかかります。このため、次の要因の影響を受けます。

  • ① 検査に慣れていない
  • 初めて視野検査を受けると、手順やボタン操作に戸惑い、正確な反応ができないことがあります。検査を繰り返し再現性をみる必要がある場合もあります。

  • ② 疲労や睡眠不足の影響
  • 検査時に疲れや睡眠不足、頭痛、風邪などの体調が集中力や反応力に影響し、実際より悪い結果になりやすいです。体調を整えることが必要です。

2. 屈折性暗点

光の点を映すスクリーン面に目のピントが合っておらず、光の点がぼやけて見えにくくなり反応できず、あたかも暗点(=見えない部分)が存在するかのような結果になることを屈折性暗点といいます。。

  • ① 矯正不良
  • ご自分のメガネやコンタクトレンズ、あるいは、眼科で用意する矯正用レンズで、スクリーン面にピントが合っていない場合です。スクリーン面がぼけていないか確認が必要です。

  • ② 強度近視で後部ぶどう腫の影響
  • 近視が強くなると目の奥が突出する後部ぶどう腫が形成されやすくなります。目の中から見ると、眼底にくぼみができて高低差が出ます。視力は、黄斑の中心部分の視機能を調べますので、レンズで黄斑にピントを合わせれば問題なく視力を検査できます。ところが、視野検査は視界の広い範囲を調べるため、黄斑とそのまわりに高低差が強いと、黄斑にピントを合わせても、高低差が強いところはピントが合わず、屈折性暗点が生まれます。目の奥の後部ぶどう腫の状態と視野結果を照らし合わすことが重要です。

近視が強くなると眼球の後ろが飛び出てくる?

視野検査を受ける心構え

  • 1. 体調を整える

    前述した通り、体調や集中力の影響を受けやすい検査です。前日は夜更かしや深酒は慎み、検査に臨みましょう。風邪などで体調が悪いときは、可能であれば検査日を変えましょう。また、検査に疲れて集中力が低下して、検査精度が低下することもありますので、疲れの影響を感じたら検査員さんに伝えて少し休憩もOKです。精度の高い結果を出すには、なるべく集中力を保とうとする意識が大切です。

  • 2. 検査の目的を自分に言い聞かせる

    視野検査は精神的に辛い面があります。視野異常があると光の点が映らない間ができます。このため被験者は不安になって目を動かし、光の点を探してしまうことが起こりやすいのです。また、良い結果を出そうと意気込んで、光の点を探してしまったり、光の点が映っていないのにボタンを押してしまうこともあります。視野検査は、試験ではないので良い点数をとることが目的ではなく、今のありのままの視野の地図を描き出す時間だと自分に言い聞かせて検査に臨みましょう。

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