近視が強くなると失明するって本当?
強い近視は失明リスクを高める
「近視が強くなると失明する」と聞くと衝撃を受けるかもしれませんが、実際に強い近視のために失明する人がかなり存在することは事実です。実は、このことは眼科医にとっては常識なのですが、日本では世間的には十分に認知されておらず、子どもの近視が強くても、危機感を感じていないご両親が多いという現実があります。
この記事では、具体的な調査データをもとに説明していきます。
調査結果が裏づける失明の原因
近視は失明原因の4~5位
失明原因の調査が何年かに1回行われていますが、1位は常に緑内障が占め、調査を追うごとに増加しています。そして、「病的近視(脈絡網膜萎縮)」の順位は、4~5位を維持しています。
病的近視は、特に強い近視の方に起きる病気です。
「脈絡網膜萎縮」は、難しい医学用語ですがひとことで説明すると、眼底の網膜や網膜を栄養している脈絡膜が、薄くなって視機能を失っていく病気です。
強い近視は緑内障の発症を増やして、失明リスクを高めます
以下の図は、日本人が失明する原因の最新の調査結果を示しています。
これを見ると、「病的近視(脈絡網膜萎縮)」は5位になっています。
赤枠の部分は、近視に関係する失明原因をあらわしますが、もっとも重要な事実は、強度近視の人が失明する原因には、「病的近視」以外にも「緑内障」があるということです。
この理由は、近視が強い人は、14倍も緑内障になりやすいと報告されているためです。これは言い換えると、近視が強くなって失明する人は、第5位の「病的近視」に相当するだけではなく、第1位の「緑内障」にも、部分的に相当することになります。
緑内障で失明する28%の人の中に、強度近視の人がどれくらいを占めるかは不明ですが、強い近視の人が失明する原因は、病的近視だけではなく緑内障でもあることに注意が必要です

失明のリスクについて
強い近視は万病のもと
近視が強くなると、網膜剥離、白内障、緑内障、病的近視など、さまざまな病気になりやすくなります。
網膜剥離と聞くと失明が連想されるかもしれませんが、実際は、網膜剥離は手術で治せるため失明することは稀です。
白内障は、40代など比較的若い年齢で起きやすいという問題はあるものの、白内障手術で治りますので、失明の原因にはなりません。
失明リスクがあるのは脈絡網膜萎縮と緑内障
一方で、病的近視による脈絡網膜萎縮と緑内障は、進行が早い場合、失明するリスクがあります。
脈絡網膜萎縮は治療法がない
残念ながら、脈絡網膜萎縮は現在の医学では治療法がありません。急に見えなくなる病気ではなく、緑内障と同様に、年を重ねるとともに徐々に進むという特徴があります。
萎縮した部分は見えなくなり、その範囲が視力をつかさどる黄斑に及ぶと視力が低下し、文字などが見えなくなります。しかし、周辺の視野は残りますので、なんとか歩くことはできます。
緑内障は生涯の治療が必要
緑内障と診断されたら、目薬による治療と通院が一生涯必要になります。緑内障手術による強い治療が必要になる方もいます。
強度近視の方の緑内障は、比較的若年例で視野障害が始まったり、中心近くが障害されやすかったり、早期発見が難しかったりなど特徴があり、治療において特別な注意が必要です。
近視による失明を防ぐには、近視進行予防が大切

これまでの説明のなかで重要なポイントは、脈絡網膜萎縮は治療法がないということです。これは、現時点の医学では近視が強くなって失明する人を減らすには、強度近視を減らすしかないということになります。
つまり、近視が始まるとされる6歳ごろから近視進行を防ぐライフスタイルの選択と予防治療を始めることが、唯一の解決手段と言えるのです。
失明は人生を変える

「失明」という言葉は、多くの人にとって非常に深刻で恐怖を感じるものです。今まで当たり前に見えていたものが見えなくなるということは、ひとことで片付けられない生活と、人生の激変をもたらします。
ものを見て感じたり、確認したりすることができなくなります。人の表情がわからなくなり、スマホも自由に見ることができません。自由自在に歩けなくなり、運転もできなくなります。
当たり前と思っていた視覚が失われることは、大きな心理的ショックをもたらします。幼少期に近視が強くなるほど、成人して以降の人生のどこかで、失明という岐路に立たされる可能性が高まります。
そのため、小さなお子様のいるご両親は、少しでも近視の進行をスローダウンさせる努力を始めることが大切です。
この記事を執筆した医師

株式会社Personal General Practitioner代表取締役社長/医学博士・眼科専門医
板谷 正紀
京都大学医学部卒業。以後20年間、京都大学および米国ドヘニー眼研究所で網膜と緑内障の基礎研究と臨床、手術に取り組む。 京都大学では眼底の細胞レベルの生体情報を取得する革新的診断機器「光干渉断層計(OCT)」などの開発と普及に貢献する。 複数の産学連携、医工連携プロジェクトを企画推進し、2003年文科省振興調整費「産官学共同研究の効果的推進」に選ばれる。 医師でのキャリア35年。増殖糖尿病網膜症や増殖硝子体網膜症、緑内障などの難症例の手術治療を得意とする。
英語論文148報(査読あり)
著書『OCTアトラス』、『OCT Atlas』、『Everyday OCT』、『Myopia and Glaucoma』、『Spectral Domain Optical Coherence Tomography in Macular Diseases』
株式会社Personal General Practitioner(PGP)https://pgpmedical.com
