オルソケラトロジー
近視の進行予防にもなる「オルソケラトロジー」
オルソケラトロジーは、夜間の睡眠時に専用コンタクトレンズを装用することにより、角膜を平坦に変形させて近視を矯正します。角膜を平坦に加工することで角膜の屈折力を弱めて近視矯正する点では、レーシックと同様です。
オルソケラトロジーでは角膜を一時的に平坦にするだけのため、時間が経てば元に戻ります。最近では、学童期にオルソケラトロジーを使用すると、近視の進行を3~5割抑制できることがわかってきました。
オルソケラトロジーとは
オルソケラトロジーでは、専用レンズを夜寝る前につけて、朝起きたら外します。このレンズは、高酸素透過性のハードコンタクトレンズです。通常のハードコンタクトレンズより大きく、角膜とほぼ同サイズです。
近視の程度に応じて、必要なだけ角膜を平坦にするように設計されています。ちょうど石膏細工のように、角膜の形を平坦に変えると考えてください。ただし、角膜の変化は緩やかで、必要な形まで変化するには1~2週間かかります。つまり、それくらい継続すると昼間裸眼でよく見えるようになります。
オルソケラトロジーの夜間レンズ装用は毎日続ける必要があります。レンズ装用をお休みすると、徐々に角膜は元の形状に戻っていくためです。就寝中のレンズ装用に慣れれば、快適な裸眼での生活を送ることができます。
オルソケラトロジーに向いている人
オルソケラトロジーは、レーシックやICLのように手術をするわけではなく、メガネやコンタクトレンズのように日中に装具をつけるわけでもないため、スポーツに向いています。
激しいスポーツでも、メガネやコンタクトレンズのように外れるという問題が起きません。格闘技などによる目の打撲というアクシデントにも強い治療です。
また、後述するように近視進行抑制効果があることもわかってきました。近視が進む8~15歳の学童期の方は、一石二鳥と言えるでしょう。
ただし、強い近視の方を矯正することは難しく、中等度以下の近視、軽度乱視の目(度数は-4.00ジオプター以下の近視、-1.50ジオプター以下の乱視)が対象になります。また、円錐角膜などの角膜疾患がない方が対象になります。
オルソケラトロジーのメリット
- 日中の裸眼生活が可能
- 手術の必要がなく、万が一の目の打撲に対する脆弱性を高めない
- レンズの装用をやめると角膜の形が元に戻る
- 未成年の子どもでも治療が受けられる
- 8~15歳の近視進行を抑える効果がある
オルソケラトロジーのデメリット
- 視力が安定するのに数日かかる
- 強度の近視・乱視には不向き
- 遠視の矯正はできない
- 円錐角膜など角膜疾患のある人には不適応な場合がある
- 一般のコンタクトレンズ同様に、ケアや角結膜のトラブルへの対処が必要
オルソケラトロジーによる近視進行予防の効果
オルソケラトロジーは近視矯正効果があるだけではなく、8~15歳の急激な近視進行を抑制する効果があることがわかってきました。メガネだけ使用している学童と比較すると、37%~55%の抑制効果が報告されています*。
なぜ、オルソケラトロジーには近視進行抑制効果があるのでしょうか?まだ完全に解明されたわけではありませんが、オルソケラトロジーは、網膜全体にピントが合うためではないかと考えられています。
メガネは視力検査で度数を選ぶため、網膜の中心にある黄斑部にピントがくるのは間違いありませんが、網膜周辺部は「遠視性デフォーカス」と言い、ピントが網膜の後ろにきます。
遠視性デフォーカスは、近視を進める刺激になるため、この周辺部に残る遠視性デフォーカスにより、メガネをかけても近視が進んでしまうというわけです。
一方、オルソケラトロジーでは、角膜中央が平坦になる反動で周辺部のカーブが強くなるため、遠視性デフォーカスが弱められると考えられています。
*Li, S. M. et al. Efficacy, safety and acceptability of orthokeratology on slowing axial elongation in myopic children by meta-analysis. Curr. Eye Res. 41, 600–608.