メガネ
近視の一般的な矯正法となる「メガネ」
メガネはレンズを角膜の前に置いて眼の屈折異常(近視、遠視、乱視)を矯正する屈折矯正具です。老眼鏡もメガネの一種です。メガネの歴史は古く、通説では13世紀のイタリアに遡ります。レンズを活用してものを拡大して見ることは紀元前から行われてきましたが、メガネがメガネたるゆえんは、フレームによりレンズを常に目の前に置いて手を離しても常にはっきり見えることにあります。
コンタクトレンズが普及を見たのは20世紀であるため、メガネは長らく唯一の屈折矯正具でした。メガネほど安全な屈折矯正具はありませんが、小さな不便が多いのも事実です。メガネの特徴とメリット・デメリットを一望してみましょう。
メガネで矯正できる眼の異常とは?
まず、メガネは近視と遠視の矯正ができます。近視は焦点が網膜の前、遠視は焦点が網膜の後ろにある状態です。このため近視の場合には、凹レンズを用いて屈折を弱めて焦点を後ろにずらして合わせます。逆に遠視の場合は、凸レンズを用いて屈折を強めて焦点を前にずらして合わせます。
次に、メガネは乱視も矯正できます。角膜の屈折力は角膜のカーブが生み出しています。この角膜のカーブが均一であると乱視は生じませんが、角膜カーブが大きいところと小さいところができると焦点が2つできて乱視になります。乱視の矯正には円柱レンズを用いて、このずれた焦点を一つにします。近視または遠視と乱視は1つのレンズで矯正できます。
老眼もメガネで矯正できます。若いときは、水晶体の厚みを厚くして焦点を調節する力(調節力)が強いため、焦点が遠くに合っていても、調節力で手元まではっきり見ることができます。老眼とは、この調節力が衰えることで、遠くにピントが合っているとき、手元にピントが届かずぼやけてしまうことです。手元にピントを持ってくるために凸レンズを加えます。例えば、-5ジオプター*の近視レンズは、+3ジオプターを加えると「-5+3=-2」ジオプターの老眼レンズになります。
*ジオプター:角膜や水晶体の屈折力の単位のこと。Dと表示され、近視・遠視・乱視の強さの度数を表す。マイナスは近視、プラスは遠視。
メガネのメリット
メガネは、なんと言っても眼に触れないため、眼に病気を引き起こさない極めて安全性の高い装具です。そのため、ドライアイや結膜炎など眼表面の異常があっても装用できます。他にも、かけはずしや手入れが簡単なのもメリットです。
メガネフレームは人によってはおしゃれの道具として活用できますが、メガネをかけることを負担に感じる方や顔にメガネフレームが横切ることを嫌う方もいます。メガネは好みが分かれると言えるでしょう。
メガネのデメリット
新型コロナ禍でマスク常用になると、メガネが息で曇るなど不便さが目立つようになりました。温泉にはメガネでは入れませんね。他にもメガネにはデメリットがあります。
近視用メガネは凹レンズの性質のため、かけている人の眼が小さく見えたり、メガネでものを見ると小さく見えたりします。逆に、遠視用メガネは眼が大きく見えたり、ものが大きく見えたりします。眼が小さく見えたり大きく見えたりすることは、気になる方にはデメリットです。度数の左右差が大きい方は、両眼矯正すると左右像の大きさが違いすぎて物が二重に見えてしまいます。この場合はコンタクトレンズが合っています。
メガネは、強い近視や遠視、強い乱視では十分な視力が得られないことがあり、この場合もコンタクトレンズが勝ります。特に、円錐角膜などにおける不正乱視はハードコンタクトレンズが必要になります。近視が強い方は、メガネでは視野が狭く周辺部がひずむため、朝起きてから寝るまでコンタクトレンズに頼ってしまいます。
近視用メガネレンズの特徴
近視用メガネは、かけている人の眼が小さく見えたり、メガネでものを見ると小さく見えたりします。これは凹レンズの小さく見える性質から起こりますが、同じ凹レンズでも近視用コンタクトレンズでは起きません。なぜでしょう?
違いは、凹レンズと眼の表面の間に距離があるかないかです。近視用メガネは、この距離で光が広がる分だけ小さく見えるのです。この距離が大きいほど、また近視の度数が強いほど、より小さく見えます。
コンタクトレンズは、このレンズと眼の距離がほとんどないため、いくら度数が強くても小さく見えることはありません。眼が小さく見えるのを目立たなくするためには、できるだけ凹レンズが眼に近くなるようなメガネフレームを選択する必要があります。
ものが小さく見えることは、両方の目で同じ程度に起きれば、違和感なく使えます。しかし、個人差はありますが、左右の度数差が-3ジオプターを越えると、像の大きさの差が大きくなりすぎて脳が像を一つに見せる能力(融像)の限界を超えてしまい、ものが二重に見えてしまいます(複視)。この場合は、両眼完全矯正にはコンタクトレンズが必要です。
近視用メガネの選び方
近視が強くなるほど眼が小さく見えたり、視野周辺がひずむため、さまざまな考慮が必要になります。
薄型レンズを選ぶ
球面レンズ > 片面非球面レンズ > 両面非球面レンズ の順でレンズは薄くなります。レンズが厚いほど、レンズのフレームからのはみ出しが目立ったり、視野周辺のひずみが強くなったりします。
レンズが眼に近いフレームを選ぶ
レンズと眼表面の距離が小さいほど、目が小さく見える効果は減少します。しかし、近すぎてレンズがまつげに当たるようでは気になって辛いでしょう。マスカラをすると、まつげがレンズに近づくことも考慮しましょう。
鼻パットタイプに着目する
鼻パットには、フレームと一体化した「鼻盛りタイプ」と、金属アームを介して鼻パットが付いた「クリングスタイプ」があります。一般的に、鼻盛りタイプの方がレンズは目に近づきますが、まつげに当たると調整が簡単ではありません。一方、クリングスタイプは、鼻盛りタイプよりも細かいフィッティングができます。まつげに触れない距離までレンズを近づけるフィッティングがコツです。
フェイスラインに合ったフレーム幅とレンズ幅
フレームが顔の幅を超えるとフェイスラインの段差が目立ってしまうため、顔幅と同じか小さめのフレーム幅を選ぶことがコツです。近視用レンズは中心が最も薄く、外側に行くと徐々に厚くなるレンズ板をフレームに合わせて切断して用います。幅の狭いフレームを選ぶと厚みのでる部分の使用が減り、歪みを減らすことが出来ます。
乱視を矯正するメガネレンズとは?
メガネで矯正できる乱視は「正乱視」です。正乱視とは、角膜が一つの軸を中心に対称的なひずんだ形状、すなわち楕円体の形状をもつ場合に起きる乱視です。
乱視のない角膜をバレーボールに例えるなら、正乱視の角膜はラグビーボールに例えることが出来ます。
正乱視の角膜はカーブが強い強主径線と、カーブが弱い弱主径線があります。カーブが強いほど屈折力が強いため、強主径線の手前の焦点と弱主径線の奥の焦点の間に焦点が分布します。これが二重に見えたり、ぼやけたりする原因になります。
正乱視を矯正するには、目の歪みがある方向と逆の歪みを持つ円柱レンズを用いることで、歪みを打ち消し合い、光の焦点を一つにすることができます。
大部分の方は線対称な正乱視ですが、円錐角など角膜の病気があると不規則な乱視(不正乱視)となります。不正乱視はメガネやソフトコンタクトレンズでは矯正できないため、ハードコンタクトレンズで矯正します。
メガネ購入前に眼科受診を勧める理由
メガネをかけても見えにくくなってきたとき、近視や乱視が変化したのかと想像し、メガネを変えようと思う方が多いと思います。しかし、目の病気や変化が原因で見えにくくなっている可能性もあります。
白内障や目の奥の病気は高齢の方の病気と思われがちですが、若年者でも起こることがあります。白内障は、アトピーや強度近視の方、あるいは原因不明に30~40歳代でも白内障になることがあります。
網膜剥離は、中高年期と若年期に起こりやすい病気です。40歳代で起こる「中心性漿液性網膜脈絡膜症」という黄斑(網膜の中心部分)の病気もあります。
こういう特殊な病気ではなくても年齢とともにドライアイが進み見えにくく感じることもあります。今まで見えていたのに、急にあるいは徐々に見えにくくなってきたことに気がついたら、まず目の健康状態を眼科で確認するようにしましょう。