ICL

レンズの力で目の中から視力矯正する「ICL」

近視矯正の基本は、凹レンズを目の前(メガネ)や目の表面(コンタクトレンズ)に置いて屈折を緩め、ピントを後方の網膜に合わせることです。最近では、レーシックやオルソケラトロジーのように、屈折力の強い角膜を平坦に変形させて屈折力を緩める方法もあります。

ICLは、メガネやコンタクトレンズと同様に凹レンズを使いますが、置き場所が目の中です。半永久的に目の中に入れっぱなしになるため、レーシック同様に、かけはずしも手入れも不要で、クリアな裸眼生活を楽しめます。レーシックとは違い、角膜を削らないため様々なメリットがあります。

なぜICLというのか?

ICLは、学術的には「Collamer」という素材からできている目の中に入れるレンズという意味の “Implantable Collamer Lens” の略であり、目の中に挿入するコンタクトレンズという意味の “Implantable Contact Lens” の略でもあるため、用語的にやや混乱しています。

ICLは学術用語であるとともに、スタージャパン合同会社の “ICL(アイシーエル)” という商標でもあります。

目の中に入れるレンズとしては白内障手術で用いる「Intraocular Lens (IOL)」が先発になるため、区別するためにICLは、“水晶体を取り除かずに目の中にレンズを入れる” という意味で「有水晶体眼内レンズ(フェイキックIOL)」とも言います。

レンズを挿入する位置により「前房タイプ」と「後房タイプ」に分けられます。現在では、後房タイプの方が主流になり、その原動力がスタージャパン社の “ICL” の世界的普及です。日本の厚生労働省が認可した唯一のフェイキックIOLでもあります。現在、インターネットで主に目にするICLは、スタージャパン社の “ICL” を指します。国内で使用されている後房タイプは、他にIPCLというICLがあります。

ICLの歴史

眼内コンタクトレンズとしてのICL(Implantable Contact Lens)は、1970年代から研究開発が行われ、1986年にはじめて人の眼に移植されるなどレーシックよりも長い歴史があります。その後改良が加えられ、1996年に世界で初めてヨーロッパで認可され、2005年には米国でも認可されました。国内では、1997年にICL研究会代表 清水公也氏により導入され、日本国内で実施した臨床試験データを元に、2010年に厚生労働省より高度管理医療機器「有水晶体後房レンズ」として承認されています。

さらに2014年には、清水氏の考案により開発されたホールICL(穴あきICL)が認可されました。それまでのレンズは、房水循環(眼の中の水の流れ)を妨げるため、レーザーや手術で虹彩に孔をあけて房水循環を維持する必要があり、約1~2%白内障が進行するというリスクがありました。ホールICLは房水循環が保たれるため、虹彩に孔を開ける必要がなくなり、白内障のリスクが低下しました。この改良により、ICLの世界的な普及が始まったと言えます。

ICLの構造と安全性

画像引用:スター・ジャパン合同会社

ICLは、レンズの働きをする「光学部」と、レンズを安定して固定するための「支持部」からなります。最新のICLには5つの孔が開いています。

2014年以前のICLには、手術でICLを正確に固定するためのマークと4つの孔が開いていました。そこへレンズの真ん中に「ホール」と呼ばれる0.36mmの孔が追加されました。このため“ホー ルICL”と呼ばれています。

目の中の水分である房水が「ホール」を通って流れることができるようになり、この小さな孔のおかげでICLの安全性が格段に高まりました。

「ホール」がないとICLにより房水の流れが妨げられて、急激に眼圧が上昇する緑内障発作や白内障進行のリスクがありました。これを防ぐため、黒目(虹彩)にレーザーで人工的な孔を開ける必要があったのです。

ICLのポジションと安全性

フェイキックIOLは、虹彩の前に固定する前房タイプと、虹彩の後ろの後房に固定する後房タイプとがありますが、“ICL(アイシーエル)” は後房タイプになります。

後房は、眼の虹彩と水晶体の間にあるスペースで、角膜に問題が起こりにくい安全な場所といえます。ICLのサイズをフィットさせれば、後房固定はレンズのセンタリングや安定性が良好です。

ICLの素材と安全性

ICL(アイシーエル)は、ソフトコンタクトのように柔らく、薄くて無色透明のレンズです。素材としては、「ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)」と、コラーゲンの共重合体である「コラマー(Collamer)」からできています。

水分を含ませると軟らかくなる特徴があり、丸めて小さな切開創から眼内に挿入できます。また、387nm以下の紫外線を90%以上カットする特性も備えています。ICLの快適性と安全性は、コラマーの優れた特徴のお陰と言えます。

【コラマーの特徴】

■ レンズへのタンパク付着を防ぐ(汚れにくい)
コラマーは、コラーゲンによりレンズがマイナス電荷を帯びているため、タンパク質などのマイナス荷電粒子を反発してレンズへの付着を防ぎます。

■ グレアが少ない(まぶしくない)
コラマーは親水性であるため、レンズ表面に親水層を形成し、光視症(まぶしさ)をもたらすレンズ内部反射を軽減します。

■ 高い生体適合性
コラマーは生体適合性の良い素材で、眼内で長期的に安定し、レンズのメンテナンスは不要です。

ICLのメリット

一般的なICLのメリット

ICLはレーシック同様に、メガネやコンタクトレンズが必要ない裸眼生活を実現してくれるため、以下のような様々なメリットがあります。

  • メガネ、コンタクトレンズと異なり、その存在を忘れることができる
  • メガネ、コンタクトレンズのように紛失したり壊れたりしない。特に、スポーツや旅行などで快適
  • コンタクトレンズのように付け外しが必要ない。レンズのケアも必要ない
  • コンタクトレンズにように花粉症やドライアイを悪化させることがない
  • コンタクトレンズは角膜や結膜のトラブルが起こることがあるが、ICLは起こらない
  • コンタクトレンズのように継続的な費用が発生しない

レーシックと比較したICLのメリット

ICLは、レーシックの角膜を削ることによって起きる種々の問題が生じないというメリットがあります。具体的なメリットを見てみましょう。

  • 見え方の質が良い
    レーシックはレーザーで角膜を削り角膜をフラットにします。この加工の程度が強いほど視界のコントラストを悪くする収差が発生します。対してICLは、角膜に手を加えずレンズの力で近視矯正します。このためICLはコントラスト低下が起こらず、鮮明でシャープな見え方になります。
  • ドライアイになりにくい
    レーシックは術中に角膜を広範囲に切断するため、角膜の知覚神経が再生する半年~1年間はドライアイになりやすくなります。対してICLは角膜をほとんど切らないため、この問題は起こりにくいと考えられています。
  • 適応範囲が広い
    レーシックでは、近視が強いほど角膜を削る部分が厚くなります。削りすぎると角膜は薄くなり問題が出やすくなるため、-10ジオプターを超える強度近視の方にはできません。 -10ジオプター以下でも、-6ジオプターを超える場合は慎重適応とされています。対してICLはレンズの力で矯正するため、このような強度近視の方でも治療できます。
  • 術後の視力が安定
    レーシックは約5%の割合で、時間とともに近視が進み裸眼視力が低下します。「近視戻り」といいます。対してICLは、近視戻りによる裸眼視力低下はほとんどないと考えられています(術後5年間の調査)。
  • 取り出せる
    レーシックは、角膜の形状を変えるため元に戻すことはできません。対してICLは、手術で取り出すことができます。
レーシック ICL
安定性 5%程度の頻度で近視が戻る 視力の安定が良い
見え方 コントラストがやや低下する
ハローグレアが気になることがある
見え方の質が高い
適応範囲 軽度から中等度までの近視が適応
角膜の薄い眼は適さない
軽度の近視から強度の近視まで適応
手術の可逆性 削った角膜は元に戻せない ICLは取り除くことができる
治療費 リーズナブル
(おおよそ20万円~46万円)
まだレーシックよりも高い
(おおよそ40万円~70万円)

ICLのデメリット

手術でレンズを目の中に入れることによるICLのデメリットをご紹介します。

  • 近視や乱視が進んだとき、あるいは高機能な新製品が出たとき、メガネやコンタクトレンズのように簡単に買い換えることができない。交換には手術が必要になる。(実際に交換が必要なケースは稀です)
  • ホールICLの孔に光が屈折し、輪のような光が見える
  • 国内在庫されていないレンズが必要になったとき、手術までに期間を要する
  • 現時点では、レーシックよりも費用がかかる

ICL手術の流れ

ICL手術のおおまかな工程を図とともに示します。片眼10分以内の手術内容です。

  1. Step01

    点眼麻酔

    手術前に薬で瞳を大きく開きます。麻酔は点眼麻酔で行います。

  2. Step02

    角膜切開

    角膜の縁に小さな切開を行います。

  3. Step03

    ICL挿入

    切開創から、丸めたICLを補助具であるインジェクターを用いて眼内に挿入します。

  4. Step04

    ICLが自然に本来の形に戻る

    丸まったICLは目の中で自然に開きます。

  5. Step05

    後房固定

    ICLの支持部を虹彩の後ろの後房に挿入します。

  6. Step06

    縮瞳

    瞳を薬で縮瞳させ手術は終了です。

ICL手術後によくみられる気になる症状

ICLの術後に以下のような症状を感じることがありますが、ほとんど一時的な症状のため、過度な心配する必要はありません。

  • 手術直後のかすみ、ぼやけ、まぶしさを感じる
  • 異物感、しみる感じを感じる
  • 結膜下出血
    白目の出血です。角膜縁の血管があるところにメスを入れるため出血し、白目が赤くなります。追加の治療をせず様子を見るだけで、1~2週間程度で消失します。
  • 夜間のハロー、グレア
    手術後に、夜間、光の周囲がぼんやり広がって見えるハローや、光が滲んで見えるグレアが見えることがあります。術後一時的に強く出ることがありますが、すぐ軽快し気にならなくなります。

ICL手術後に稀に起こる、治療が必要な合併症

どれも稀ですが、術後追加治療が必要な合併症があります。

合併症の症状 内容
一時的な眼圧上昇 稀に手術翌日に眼圧が上がることがあります。手術を安全に行うために使用する粘弾性物質(ヒアルロン酸ナトリウム)を手術中に吸引しますが、レンズの後ろの粘弾性物質が抜けにくいために起こります。眼圧上昇が軽度なら、眼圧を下げる点眼や内服を手術後に用い、多くの場合翌日には下がります。眼圧上昇が大きいときは、手術室に戻り残った粘弾性物質を吸引除去します。
ICLの度数がずれる 予測したICLの度数がずれて軽い近視または遠視が残る状態です。極めて稀です。術前検査を省略するとずれるリスクが生じます。万が一、度数ずれが起きた場合は、即座に入れ替えを行うことにより解決できます。
ICLサイズのミスマッチ ICLのサイズ(対角線の長さ)は目の大きさに対して12.1mm、12.6mm、13.2mm、13.7mmの4種類があります。後房の大きさを測定して最適なレンズサイズを選択しますが、稀にサイズのミスマッチが生じます。小さすぎるとICLが術後回転することがあり、乱視を治すトーリック軸がずれてしまう原因になります。サイズのミスマッチもレンズの入れ替えにより解決します。
術後眼内炎 内眼手術に共通する術後合併症が術後眼内炎です。眼内に細菌が入って感染することをいいます。ICLでの眼内炎は約1/6,000件と極めて稀ですが、万が一発症した場合は抗生剤の内服や点滴、程度によっては前房洗浄やICL摘出など、適切な対処が必要になります。
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