アカントアメーバ角膜炎
コンタクトレンズの保存ケースをアカントアメーバの増殖マシーンにしないために
コンタクトレンズ装用が原因で発症する感染性角膜炎の原因菌は、細菌・真菌・アメーバなど種類があります。なかでもアカントアメーバ角膜炎が恐れられている理由は、有効な薬物が存在せず、重症化して角膜移植が必要になるケースがあるためです。
アカントアメーバは、土壌や水道水など日常環境に生息します。しかし健康な目には感染しないため、心配はありません。問題は、「コンタクトレンズ使用などにより角膜表面が荒れて免疫システムが弱くなる」、「2weekレンズなどで使用する保存液あるいはレンズケースが水道水などからアカントアメーバが入り込み増殖する」という2つの条件が揃うことです。
感染すると角膜専門医でも手を焼く「アカントアメーバ角膜炎」について理解を深め、コンタクトレンズのケアを振り返りましょう。
アカントアメーバ角膜炎が起きる2つの条件
アカントアメーバは淡水、土壌などに広く分布し、水道水やプールからも検出されます。
しかし通常は、人が持つ免疫システムのおかげで感染しません。ところが、2weekや長期装用ソフトコンタクトレンズの場合、アカントアメーバ感染の以下の条件が揃ってしまうことがあります。
①目に傷がなければ感染しませんが、コンタクトレンズを長時間装用したり、ドライアイがあると角膜表面の細胞が速く傷んで脱落し、免疫システムが低下します。
②たとえ目に少々の傷がある場合でも、少数のアカントアメーバでは感染しません。保存液の中でアカントアメーバが何十万、何百万という数に増殖すると感染可能になります。
コンタクトケアの落とし穴
アカントアメーバの特徴には、【水道水やプールなど身近に存在する】【細菌を餌にして増殖する】ことが挙げられます。
水道水やプールの水は、塩素消毒により細菌がいないためは増殖できません。水道水で目を洗ったり、プールで泳いでも感染しません。しかし、レンズを付けて泳いだときやレンズケース洗浄時にアカントアメーバが入り込む余地を与えます。
水道水で洗うことが多いケースですが、十分に乾燥させないとアカントアメーバが残ります。そこにアカントアメーバの餌である細菌が付いたままのソフトコンタクトを入れると、アカントアメーバが増殖してしまいます。
手にも細菌が付いているので、石鹸で手洗いした後に、指でレンズを20回以上こすり洗いして細菌を十分に減らすことが重要です。ソフトコンタクトレンズの洗浄で最も使用されているMPS(マルチ・パーパス・ソリューション)を過信してはいけません。消毒力が弱いため細菌を完全には殺せません。
以上のことから、レンズケースの洗浄と乾燥が極めて重要であることが分かります。アカントアメーバを持ち込まないことです。プールでコンタクトレンズを付けたまま泳ぐのもアカントアメーバを持ち込む可能性があるため危険です。一方、1Dayは、アカントアメーバが増殖するチャンスがないため安全ですが、規則を守らず何日間も1Dayを装用してアカントアメーバ角膜症になった例もあります。
アカントアメーバ角膜炎は治りにくい
アカントアメーバ角膜炎に良く効く薬は存在しないため、その治療は困難を極めます。重症な場合、治っても視力は元に戻りません。現在行われている治療法は、「角膜病巣掻爬」です。
角膜病巣掻爬は、感染を起こした角膜組織を何度も削り、アカントアメーバを減らす根気の必要な治療です。これに、抗菌作用のある点眼薬数種類と抗真菌薬の全身投与を併用します。
角膜掻爬を繰り返す必要があるため入院が必要で、長期の治療が必要になることもあります。
感染が治まっても角膜の白い混濁が残り、視力障害が残ります。重症な場合は、ほとんど見えなくなり角膜移植が必要になるため、アカントアメーバ角膜炎は、予防が一番大切であると言えます。