ライフスタイル(生活習慣の改善)

近視進行を抑えるには
ライフスタイルのチェックが必要

近視の進行には、遺伝以外にも学童期(8~15歳)のさまざまなライフスタイルが大きく関係することがわかってきています。アジアの国々で爆発的に近視が増えていることを背景として、熱心な研究が行われてきました。もっとも注目したいのは、屋外で過ごす時間が十分だと近視が進みにくくなるという知見です。

経済の成長とともに、受験競争や生活空間の都市化に伴い、学童期に屋外で活動する機会が減っています。また、スマホやタブレットが生活や学校の授業に入ってきたことで、液晶画面を見る時間が増え、近視が進みやすくなります。特に都市部の学童は、何も知らずに生活しているといつの間にか近視が強くなっている、ということが起こるようになっているのです。

ライフスタイルの見直し~屋外活動を増やすと近視が進みにくくなる

屋外活動を十分な時間行うことで、近視の進行を抑えることができることが分かってきました。両親ともに近視の子供は5.7倍近視になりやすいとされていますが、屋外活動を週に14時間以上行うと、その差が縮まり、近視になりにくくなることが分かっています*。つまり、日に2時間屋外活動を取り入れれば良いわけですね。

台湾では法律を改正して、体育の授業を週150分屋外で行うことを義務づけ、そのほかの授業(理科など)なども屋外での実施を推奨しています。これは、明るさ1000ルクス以上の光を週11時間以上浴びた子どもは、近視になりにくいという研究成果に基づいています。一般的に屋内では300ルクス前後、窓際でも800ルクス前後ですが、屋外では日陰でも数千ルクスに達します。つまり、十分な光を浴びるには屋外でなければ難しいということであり、屋外で1日2時間を目標にしているのです。意識が高いですね。

では、なぜ十分な光で近視が進みにくくなるのでしょう?オーストラリアの研究では、十分な光を浴びることにより網膜にドーパミンという神経伝達物質が大量に産生され、それが近視を抑制遺伝子に働きかけると考えられるようになりました**。ちなみに、オーストラリアでは児童は昼食を外で食べることが義務付けられています。

*Lisa A Jones, et al. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2007 Aug;48(8):3524-32. doi: 10.1167/iovs.06-1118.

**https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4351/

ライフスタイルの見直し~本や液晶を近づけすぎないこと

近くを見る作業も近視の進行を速めます。作業を行う場合、30センチ以内の距離に本を近づけて読むと2.5倍、30分以上継続して読書をすると1.5倍、近視になりやすいとされています。

シンガポールや中国など、学童のゲームやスマホ・パソコンの時間を制限する対策を行っている国もあります。

特に、気を付けていただきたいのはスマホや小さな画面のゲームです。大人もですが、小さい液晶画面はつい近づけて見てしまいがちです。可能であれば大きめの液晶画面を使うのが望ましいといえます。30センチ離して作業することを習慣にしたいところです。

ただし、近くを見る作業をしないでくださいというわけではありません。身体の成長とともに、脳や心の成長も著しい学童期には、学習や読書は必須です。たとえ、近くを見る作業が長くても、屋外活動を日に2時間確保できれば近視は進みにくいということをしっかりと認識しておきましょう。

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