辛くない春を迎えるために…目の花粉症対策ガイド

目の健康ブログ

鍵はアレルギー性結膜炎の予防

今年も花粉症シーズンがやってきました。こどもも大人も目が充血し、涙がボロボロ…花粉症シーズンの目のかゆみは本当につらいですよね。あまりのかゆさに、「目を丸洗いしたい…」なんて気持ちになる日もあるでしょう。桜が咲き気持ちのいいそよ風が吹く春が辛いシーズンになっている現実は残念なことです。

でもご安心を!正しい知識で自分なりの対策を身に付けていけば「目が辛くない春」に変えていくことができるはず。なかでも強調したいのは予防対策です。喜びの春を取り戻しましょう。

花粉症は対策可能?

目がかゆくなるのは、目の表面やまぶたにアレルギー性の炎症が起きているからです。アレルギー性結膜炎です。目以外にも、くしゃみ、鼻水、頭痛、皮膚炎、だるさなど全身のアレルギー症状がでます。アレルギーの原因(アレルゲン)が花粉の場合、花粉症と呼ばれています。原因が植物なので季節性があるのが特徴です。アレルゲンは、ハウスダストやペット由来のものなど他にもさまざまありますが、これらは通常季節性がありません。花粉症は、毎年来ることが分かっていますので、あらかじめ知識を増やし対策を立て、辛くない程度に抑えることをめざしましょう。

花粉症によるアレルギー性結膜の目の症状とは?

いちばん辛いのは目のかゆみです。「目の奥がムズムズして、とにかくかきたい!」という強いかゆみが出ます。加えて、目の充血(白目が赤くなる)、まぶたの腫れ、ゴロゴロとした異物感大量の涙や目やに(分泌物)などもよくある症状です。

花粉でアレルギー性結膜になるわけ

では、なぜ花粉症で目に辛いことが起きるのでしょうか?原因は目で起こるアレルギー反応です。花粉が目に入ると、体の免疫システムが「侵入者だ!」と過剰反応を起こします。具体的には、花粉に含まれるアレルゲン(タンパク質)が目の粘膜で免疫細胞を刺激し、ヒスタミンなどの炎症物質が放出されます。このヒスタミンが目の神経を刺激すると強いかゆみを感じ、血管が拡張すると充血や腫れが起こります。いわば目の表面やまぶたの裏に炎症物質の嵐が吹き荒れるわけです。

【予防法】花粉症から目を守る7か条

花粉症は症状が出始めたときは、家が火事になっているようなもので、消火がたいへんです。花粉症で辛い日々を減らすためには、予防法を取り入れていく考え方が大切です。花粉症の予防には、次の3つのアプローチを頭に入れてください。

  • 花粉を寄せ付けない(1か条~4か条)
  • 免疫バランスを整える(5か条、6か条)
  • 初期療法(7か条)

これをもとに始めやすい7つの方法にまとめました。今役立つものも、今年はもう遅いものもありますが、来年以降のために知っておき、自分なりの予防戦略を身に付けていただきたいと思います。

1. 花粉を「つけない」べし!

  • 花粉対策メガネを活用しよう:通常のメガネでも約40~60%カット、フード(防護カバー)付きの専用メガネなら約94%カット!
  • マスク+メガネのW防御で:鼻&目の花粉侵入を最小限に。マスクは、吸い込む花粉を1/3以下に減らす効果があり、花粉症用マスクなら1/6ほどまで低減できるとされています。

2. コンタクトレンズを「対策する」べし!

  • 1日使い捨て(ワンデー)にしよう:コンタクトレンズに付着する花粉により、花粉症の症状を悪化させることがあることが知られています。ワンデーは、花粉の付着を最小限にできます。
  • 非イオン性素材を選ぼう:イオン性コンタクトレンズは静電気を帯びやすく、花粉がくっつきやすいため、非イオン性のコンタクトレンズを選びましょう。
  • ドライアイを対策しよう:レンズが乾くと表面に花粉がつきやすくなるため、涙のうるおいをキープすることが大切です。人工涙液や抗アレルギー薬の点眼は、レンズ表面についた花粉を多少とも洗い流してくれます。防腐剤フリーが望ましいでしょう。
  • メガネで過ごすのがベスト:花粉を含め異物が目に入ると涙とまばたきにより異物を洗い流す働きがあります。しかし、コンタクトレンズをしていると、涙の循環が悪くなり、花粉を洗い流す働きが弱まるため、「花粉の時期だけメガネに変える」のがベストです。しかし、コンタクトレンズを休めない方は、必要時にワンデーSCLを使い、それ以外メガネ、が現実的な解かもしれません。
  • コンタクトの上から伊達メガネ:メガネは花粉が目に入るのを半分くらい防いでくれることが期待できますので、人目を気にしない通勤などの場面ではコンタクトの上から、度のないメガネをかけるのも良い方法です。

3. 帰宅時は「顔を洗う」べし!

  • 顔を洗う:帰宅後はまず顔を洗って、花粉を落としましょう。
  • まつ毛の付け根も洗う:まつ毛についた花粉も落としましょう。まぶた専用の液体せっけんも利用できます。
  • 眼球は点眼で洗う:まぶたは洗えても眼球表面は洗いにくいですね。そこで、人工涙液や防腐剤なしの目薬を使うのがおすすめです。

4. 室内の花粉を「減らす」べし!

  • 空気中の花粉を減らす:空気清浄機を花粉モードに設定!(フィルター掃除も忘れずに)
  • 床や壁の花粉を減らす:掃除は花粉の少ない朝に水拭き! 花粉は床に溜まるので、静かに拭き取るのが◎なんです。掃除機をかけると花粉が舞い上がるので注意!
  • 洗濯物の花粉付着を減らす:取り込む際にパンパンとはたいても約80%の花粉は残ったままだったとのデータあり。洗濯物は部屋干しまたは乾燥機推奨!
  • 花粉を持ち込まない:上着や髪にも花粉は付いているので、玄関先で軽くはたいて落としてから中に入るとより安心です。

5. 目を「こすらない」べし!

  • こすると悪化!ヒスタミンの放出が増えてかゆみ倍増
  • どうしてもかゆい時は冷たいタオルで冷やしたり、人工涙液で洗い流す
  • 目薬を上手に活用!(かゆみに即効性のあるステロイド点眼を眼科で処方してもらい適切に使う)

6. 免疫バランスを「整える」べし!

  • 免疫力維持に必要なのはバランスの取れた食生活
  • 腸内環境を整えて免疫バランスを調整(ヨーグルト・納豆・発酵食品など)
  • 睡眠不足は花粉症悪化のもと!(7時間以上の睡眠を心がける)
  • ストレス管理も重要!(リラックスできる時間を確保)

7. 初期療法※を「取り入れる」べし

  • 花粉が飛び始める2週間くらい前から治療を開始することを初期療法という
  • 昨年までの症状に応じてアレルギーを抑える内服薬、点眼薬、点鼻薬のうち該当するものを用いる
  • 発症を遅らせたり、症状を軽くできる効果が期待できる
  • 第2世代抗ヒスタミン薬を用いると症状軽減効果が大きい

※初期療法の奏功メカニズム

なぜ初期療法が効くのか興味のある方のために、もう少し医学的な説明をさせていただきます。初期療法の効果はインバースアゴニスト効果によるものです。

アレルギー反応を引き起こすヒスタミンH1受容体には, 活性型H1受容体不活性型H1受容体とがあります。ヒスタミンが活性型H1受容体にくっつくとアレルギー反応が起こります。一方、ヒスタミンが不活性型H1受容体にくっついてもアレルギー反応は起こりません。つまり、活性型H1受容体が多いとアレルギー反応は増強し、逆に不活性型H1受容体が増えるとアレルギー反応は低減するわけです。アレルギー性結膜炎に用いられる抗ヒスタミン薬は不活性型H1受容体を安定化させる効果があることが分かってきました。

つまり、抗ヒスタミン薬により不活性型H1受容体が増えるわけですね。このため、花粉が飛散する前から、抗ヒスタミン薬を使えば不活性型H1受容体が増えて、花粉が飛散する頃には、ヒスタミンの効果がでにくい身体になっているということです。こうして、花粉症の症状を減らすことができるのです。このインバースアゴニスト効果は、特に第2世代抗ヒスタミン薬で効果が高いとされています。

かゆくなってしまったら

目にかゆみが出たら、家に火がついても燃えている状態です。かゆくて目をこすると、風で火を消そうとするようなもので、火の勢いを高めてしまいます。そこで、眼科で点眼治療を開始します。眼科で使用する点眼薬は、次の2つが2本柱です。

1. 抗アレルギー薬点眼

アレルギー反応を抑える作用がある抗アレルギー点眼薬が、治療の基本になります。大きく分けて、第2世代抗ヒスタミン薬とケミカルメディエーター遊離抑制薬があります。

  • 第2世代抗ヒスタミン薬
    • アレジオン点眼液、ザジテン点眼液、パタノール点眼液、リボスチン点眼液、アレジオン眼瞼クリーム
  • ケミカルメディエーター遊離抑制薬
    • アレギサール点眼液、アイビナール点眼液、インタール点眼液、ゼペリン点眼液

2. ステロイド点眼薬

抗アレルギー薬点眼は、アレルギー反応自体を抑えていきますが、すでに燃え盛っている炎症反応はすぐには収まりません。そこで、症状が辛い場合は、炎症に対して即効性のあるステロイド点眼薬を併用します。花粉症の時期は2~3か月続きますが、最初の1か月使用する方法やかゆみが強いときに使用する方法があります。ステロイド点眼薬は、副作用で眼圧が上がるリスクがあるため、必ず医師の指導の下で使う必要があります。

【話題1】舌下免疫療法は花粉症の救世主となるか?

舌下免疫療法とは、舌の下にアレルゲン(花粉やダニ)エキスを含んだ薬を毎日投与することで、アレルゲンに身体を慣らしてアレルギー反応が起きにくくする治療(減感作療法)です。スギ花粉症に対する舌下免疫療法では、少なくとも3年間の継続で80~90%の患者に有効とされており、根本的に症状を軽減できる可能性があります。初期療法でも症状を抑えられない場合は、チャレンジする価値があります。長い治療期間(3~5年)が必要なことと、始める時期に制約があります(スギ花粉が飛んでいる時期は開始不可など)ので、長期的な視点で取り組む必要があります。

ただし、健康保険が適用されるのは、スギ花粉症やダニによるアレルギー性鼻炎に対してですので、鼻炎を伴っている必要があります。興味のある方は耳鼻科や眼科で相談してみてくださいね。

【話題2】点眼しなくていい目薬「アレジオン®眼瞼(がんけん)クリーム0.5%」

2024年には画期的な「塗る目薬」が登場して話題になりました。それが参天製薬の「アレジオン®眼瞼(がんけん)クリーム0.5%」です。これは世界初のまぶたに塗るタイプの抗アレルギー結膜炎薬で、1日1回上下のまぶたに塗るだけというお手軽さが特徴です。

メリット

  • 点眼が苦手な人や子どもでも使いやすい:特に、小さいお子さんに目薬をさすのは簡単ではないですよね?塗るだけなので、だれでも容易に使えます。
  • 涙で薄まらない:アレルギー性結膜炎の症状として流涙がある状態でさしてもすぐ涙で薄まってしまいます。つまり、効果がでにくいといった悩みがありますが、クリームならまぶたに塗るだけなので簡単ですよね。しかも24時間効果が持続するとされ、1日1回の塗布でOKというのは忙しい人にも嬉しいポイントです(寝る前に塗れば翌日ずっと楽、なんて使い方も)。
  • 1日1回塗布するだけでよい:効果は24時間持続します。職場や学校で点眼するのはたいへんですね。夜寝る前に塗れば、翌朝メイクもできます。

デメリット

  • 瞼の皮膚の副作用がある:発生頻度は0.1~5%未満とそれほど高くありませんが、まぶたのかゆみ、まぶたの赤みなど皮膚炎のリスクがあります。

【話題3】抗アレルギー薬含有コンタ クトレンズ:ワンデー アキュビュー® セラビジョン® アレルケア®

コンタクトレンズに抗ヒスタミン薬を染み込ませてあり、約5時間かけて成分がしみだしていき、目のかゆみを抑えてくれるというハイテク製品です。この薬剤は、ケトチフェンで第二世代の抗ヒスタミン剤です。レンズ1枚に含まれる薬の量は、目薬の1日の用量の10分の1ほどです。近視用のみで、購入するには眼科医の処方箋が必要になります。濃度が薄いため、強い症状には効果が不十分かもしれませんが、花粉症の季節に試してみる価値があります。花粉が飛ぶ2週間前から開始するのが良いかもしれません。

目のかゆみで辛くない楽しい春を取り戻すために

花粉症は毎年来ますので、症状が出てから慌てるのではなく、あらかじめ自分流の予防戦略を身に付けていくのが良さそうですね。この記事に書いてあることをヒントにして自分に合った実行可能な花粉症との付き合い方を習得していただきたいと願います。ほんらい春はことほぐべきもの。目のかゆみが気にならなくなり、春を存分に楽しんでいただきたいと思います。

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