近視、遠視、乱視、老視をいっきに理解しよう

目の健康ブログ

ピントが合わない原因は屈折異常と調節異常

近視、遠視、乱視≠老眼(老視)

近視、遠視、乱視をまとめて屈折異常と言います。

老眼(老視)は、この屈折異常の仲間ではなく、
子供の仮性近視(調節緊張ともいう)やスマホ老眼の仲間で調節異常といいます。

「はっきり見える」とは?

はっきり見えるのは黄斑の働き

人がはっきり見えるのは、網膜の中でも中心にある「黄斑」の働きです。黄斑は、視細胞(錐体細胞)が高密度に配置されており、細かいディテールや色を識別する能力が非常に高いです。つまり、高解像度なのです。

黄斑への結像が必要

しかし、この黄斑に光が集まらないと黄斑の高解像度は生かされません。子供のとき虫メガネで遊んだことがある人は多いと思います。ものがはっきり見えるのは、あの虫メガネで光を紙の上の的に集めることと同じです。目に入る光が、黄斑にぎゅっと1点に集まってはっきり見えるのです。この光が集まることを「焦点」といい、黄斑に焦点が一致することを「結像」と言います。

はっきり見えるしくみ

スマホカメラのオートフォーカスが当たり前になった今の時代に驚きは少ないかもしれませんが、人の目はカメラのレンズ(屈折)オートフォーカス機能(調節力)の2つの力で光を黄斑に結像して、常にどこもかしこもはっきり見ることができるます。

角膜と水晶体がカメラのレンズ

虫メガネもカメラのレンズも凸レンズです。凸レンズは、光を屈折させて集める力があります。人の目では、角膜と水晶体が凸レンズ、つまりカメラで言うとレンズの働きをしています。水晶体はレンズの形をしているためカメラのレンズにたとえて、わかりやすいですが、角膜がレンズというのはわかりにくいかもしれません。実は、角膜は水晶体の2倍の屈折力(光を曲げる力)があります。角膜はドーム状に湾曲しており、特に中央部分が最もカーブ(曲率)が大きいため、光を集める働きができるのです。

角膜や水晶体の屈折力や角膜から黄斑までの距離(「眼軸長」といいます)は、人により異なっているわけですが、黄斑に結像している目は正視、黄斑の手前に焦点を結ぶのが近視、黄斑の後ろに焦点を結ぶのが遠視です。

調節力~目のオートフォーカス機能

カメラのオートフォーカス(AF)機能は、レンズを動かしてピントを自動的に調整する仕組みです。一方、人の調節力は、水晶体の厚みを変えてピントを調節します。調節しない状態では遠くにピントが合っています。遠くからの光は、ほぼ平行な光です。手元のスマホに目をやると、スマホから目に入る光は広がる光(散光です。このため、手元から来る広がる光を黄斑に結像させるには、より強く光を屈折させて集める必要があります。つまり、水晶体を厚くします。

カメラのような人工物ではできない生物ならではの力と言えます。しかし、生物の力であるがゆえに、加齢とともに水晶体が硬くなると厚みを変える力が低下して調節力が落ちてしまいます。これが老眼です。

なぜ近視や遠視になるのか?

人は、生まれたときは眼が小さいため、焦点が黄斑より後ろにあること、すなわち遠視であることが多いのです。調節力が強いおかげで遠くから近くまで見えます。しかし、過度に強い遠視は見えにくかったり、弱視の原因になるため眼鏡による治療が必要です。

身体の成長とともに、眼も大きくなることで目の前後の長さ(眼軸長)が伸びて黄斑は後ろへ移動します。焦点の位置も後ろへ移動します。つまり、生まれた時は遠視でも、黄斑が焦点に近づいていき、焦点の位置と黄斑の位置が一致して成人すると正視になります。もともと遠視が強い子は、黄斑と後ろの焦点の距離が長すぎて、焦点が黄斑の後ろのまま成人します。これが遠視です。一方、遺伝や生活環境により、眼軸長の伸びが焦点の移動よりも速くなることがあり、黄斑が焦点に近づいて追い越します。つまり、焦点は黄斑の前に来て成人します。これが近視です。

近視について知る

乱視とは、光を不規則に屈折させること

目のレンズである角膜や水晶体の理想的な形状は、回転対称性と呼ばれる対称性を持ちます。コマは回転させても、その形は変わりませんね。これが回転対称性です。角膜や水晶体が回転対称性をもつから、目に入る光は焦点を結ぶことができるのです。この角膜と水晶体の回転対称性が失われると光の焦点は割れて一点に結像できなくなり、ものが二重、三重に見えたり、ぼやけたりしてしまいます。これが乱視です。

乱視の分類

乱視は原因別に次のように分類できます。

  • 角膜乱視:角膜のひずみや濁りにより起きる乱視
    • 正乱視:回転対称性が失われるが、フットボールのように、ある軸をはさんだ対称性は保たれる。ほとんどの人の乱視はこれ。
    • 不整乱視:回転対称性が不規則に失われる。外傷や円錐角膜で起きることが多い。
  • 水晶体乱視:水晶体のひずみや濁りにより起きる乱視。不正乱視が起きる。白内障の濁りが原因であることがほとんど。

メガネやコンタクトレンズで矯正できる乱視は、角膜の正乱視です。

角膜の不正乱視は、ハードコンタクトレンズである程度矯正できます。
水晶体の乱視は、通常は矯正できないため、許容できない場合は、白内障手術により解決します。

老眼は水晶体の老化、調節緊張とスマホ老眼は毛様体筋の使い過ぎ

人のオートフォーカス機能である調節機能は水晶体の厚みを変えることで行っていると説明しました。この調節機能は、水晶体と毛様体筋の2つが働いて行われます。毛様体筋とは、水晶体を取り巻くリング状の筋肉で、チン小帯という無数の線維で水晶体の赤道部につながっています。近くのものを見るときは、毛様体筋は収縮してリングが小さくなり水晶体を引っ張る力が緩みます。すると水晶体は本来持っている丸い形状に戻ろうとして厚くなります。一方、遠くを見るときは、毛様体筋は緩みリングは大きくなるため、水晶体は周囲に向かって引っ張られ薄くなります。これが調節のしくみです。

この水晶体と毛様体筋のどちらかの働きが落ちると調節力が落ちてどこもかしこもはっきり見えていたのが、ぼやけて見えない距離が生まれるのです。それぞれ見てみましょう。

「老眼」と「スマホ老眼」

  • 水晶体の老化
  • これが老眼です。水晶体は加齢とともに硬くなり柔軟性が低下します。このため毛様体筋が働いても水晶体の厚みは若い頃のように変化してくれません。

  • 毛様体筋の緊張
  • 現代人は、スマホなど手元を過度に長時間見続けると、毛様体筋は収縮した状態が続き固まってしまいます。これを、調節緊張とか調節痙攣と言います。原因から名付けたのがスマホ老眼です。いずれも、遠くを見たときに緩むはずの毛様体筋が緩みにくくなり、遠くがぼやけて見えます。

対処法

最後に、各屈折異常と調節異常に対する治療の選択肢を挙げてみます。

  • 近視:メガネ、コンタクトレンズ、レーシック、ICL、オルソケラトロジー
  • 遠視:メガネ、コンタクトレンズ、レーシック、ICL
  • 乱視
    • 正乱視:メガネ、コンタクトレンズ、レーシック、ICL
    • 角膜の不正乱視:ハードコンタクトレンズ
    • 水晶体の不正乱視:白内障手術
  • 老眼:近用メガネ、遠近両用メガネ、遠近両用コンタクトレンズ、多焦点眼内レンズを用いた白内障手術
  • 調節緊張、スマホ老眼:目の休息、視力回復トレーニング

詳細は下記を参照ください。

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