就学前から近視を強めないライフスタイルを身につけようPart.1

目の健康ブログ

最大のチャンスは就学前教育

就学前から近視の衝撃

最近の日本では、就学前から近視になっている子がいるという報告がされています。2021年に神奈川県で就学前の4~6歳の子供を対象に近視を調査されました。それによると、就学前の6歳児の近視保有率は3.6%でした。4歳児でも1.3%の子に近視が始まっていました※1。
これまで近視は、6、7歳くらいから始まると考えられていましたので、就学前の幼い時期にすでに近視の子がいることは衝撃的です。近視の低年齢化に歯止めがかかっていまないようです。

1.Prevalence of Myopia and Its Associated Factors Among Japanese Preschool Children

小学生就学時に半数以上が近視

小学生になると近視の児童が一気に増えます。2017年の4月~5月に東京都で行われた調査によると、6歳児で63.1%、7歳児で71.9%、8歳児で78.6%、9歳児で79.5%、10歳児で85.3%、11歳児で83.0% でした※2。
この結果は、小学校に入るころには、すでに半数以上の児童が近視になっていることを物語ります。別の調査ですので、単純には比較できませんが、就学時に近視が急激に増えるのは、やはり就学前から近視が始まっている子供が多いと考えられます。そして、就学前のライフスタイルが影響している可能性が浮かび上がります。近視を防ぐには就学してからでは遅い可能性があります。

2.Current Prevalence of Myopia and Association of Myopia With Environmental Factors Among Schoolchildren in Japan

小学生で強度近視の衝撃

2の研究で、さらに衝撃的な報告がされています。小学校の間に強度の近視(屈折値≦-6.0ジオプター)の児童が4%、10歳以上では9.8%にも及んでいたことです。10人に1人が小学校の間に強度近視になるということになります。
そして中学生では、約95%が近視で、11.3%が強度近視でした。さらには、1%強の生徒が-10ジオプターを超える最強度の近視になっていました。

強度近視は目の病気を起こすリスクを高める

強度近視になると学齢期から働き盛り、そしてシニア世代という人生の様々な場面で目の病気を招くリスクを高め、実際苦労されている方がかなり存在します。
特に、-10ジオプターを超える最強度の近視の方は、治療法のない脈絡網膜萎縮や治療法が確立されていない近視性視神経症になるリスクが高いです。
脈絡網膜萎縮は日本の失明原因の5位という現実があります。最強度の近視はなんとしても防がねばなりません。

さらに詳しく ➡
強い近視の人生行路【1】学齢期のできごと
強い近視の人生行路【2】働き盛りのできごと
強い近視の人生行路【3】シニア世代のできごと
近視が強くなると失明するって本当?

就学前から近視を速めない

修学前から近視を速めないライフスタイルを身に付けることが必要になります。

近視の低年齢化が進んでいる今の日本では、就学前から近視の進行を速めないライフスタイルを身に着けていく必要がありそうです。なぜなら、早く近視が始まるほど、近視がより強くなる可能性が高いからです。

親が近視なら就学前から近視予防が必須

親が近視の場合、子も近視になりやすいことがわかっています。特に、ご両親ともに近視である場合は、その子は近視になる可能性が極めて高いのです。つまり、子供を授かったときから、その子の近視のなりやすさはわかるのです。
親が近視の場合は、近視を速めないライフスタイルを身に付けないと、強い近視になる可能性が高まります。逆に、近視を速めないライフスタイルを身に付けると両親が近視であっても近視が進みにくいことがわかっています。半数以上の小学1年生が、入学してすぐの春に近視であることを考えると、就学前から近視を速めないライフスタイルを身に付ける必要がありそうです。

近視を速めないライフスタイルと、速めるライフスタイルの違い

近視の進行に大きく影響を与える2つのライフスタイルがあります。1つは、屋外で過ごす時間、もう一つは、近くを見る距離と時間です。

就学前から、この2つを習慣化できれば近視の始まりを遅らせ、強い近視を抑えられると考えられています。

十分な屋外で過ごす時間

さまざまな調査により、屋外で過ごす時間が十分とれている子は、両親が近視でも近視が進みにくいことがわかっています。ご両親が近視でも、ご安心ください。ライフスタイルは遺伝の影響を上回るということです。
屋外は、日なたでも日陰でも構いません。具体的には、週14時間、日では2時間程度屋外で過ごすことが推奨されています。
逆に言うと、家のなか中心の過ごし方は、子供の近視を加速させます。

近くを見る距離と時間

近視の進みを速めないためには、本やスマホなど近くを見る作業にも注意が必要です。次のようなスタイルが推奨されています。

  • 読書やスマホ視聴は30cm離して行う
  • 読書やスマホ視聴が長時間にならないようにする
  • 20分間デジタルデバイスを見たら、20秒間、20フィート(約6m)離れたところを見る(20-20-20ルール)

近視の対策と進行予防を知る

親が意識しないと子は今のライフスタイルに流される

今の子供たちは、生まれた時からテレビ以外にも、スマホやタブレットなどのデジタルデバイスに囲まれています。親がスマホを楽しんでいる姿を見て育ちます。就学前から5人に4人の子がYouTubeを中心とするインターネットに親しんでいることがわかっていますが、そうなるのは自然と言えます。

しかし、YouTubeをスマホで見ると、画面を顔に近づけてしまいがちです。YouTubeを見ている分、屋外で過ごす時間は減ります。デジタルデバイスに囲まれて生まれてくる今の子たちは、親が意識しなければ、近視を加速するライフスタイルになりやすいのです。

就学前に身に付けたデジタルライフは、就学後も続けてしまいがちです。就学前から、近視を加速させない過ごし方(ライフスタイル)を身に付けさせることが急務です。 次回は、デジタル時代のライフスタイルにフォーカスを当て、近視進行予防について考えてみたいと思います。

さらに詳しく ➡
YouTubeが好きな小学生の親御さんへ~人生を変えてしまう強度近視を防ぐために~

ピックアップ近視進行抑制治療が受けれるクリニック