YouTubeが好きな小学生の親御さんへ
~人生を変えてしまう強度近視を防ぐために~
学校検診からわかる近視の現状
「YouTubeの見過ぎで近視が加速している?」
最近、学校検診で視力低下を指摘され受診する子供たちのなかに、小学校低学年の6~7歳ですでに中等度の近視の子が少なくありません。6~7歳は近視が始まる年齢ですから、この子たちは成長するにつれ強度近視になる可能性が高いと懸念します。この子たちに、「YouTube好き?」と質問すると、はにかんで「好き」と答えます。そして多くの子は、スマホで見ていることがわかります。「スマホは画面が小さいので、近づけて見てしまいやすいので、近視が進むスピードが速くなります。」「YouTubeを見てはいけないわけというわけではなく、タブレットやTVなど、できるだけ大きな画面で見せてください。」と親御さんに伝えます。
こうしたやり取りを繰り返しているうちに、「低年齢のYouTube好きが近視に影響を与えているのかな?」と思うようになり、低年齢層(10歳未満)のスマホ利用状況を調べてみました。
スマホ利用に関するエビデンス
令和5年度青少年のインターネット利用環境実態調査結果(速報)(こども家庭庁)の報告をまとめました。
詳しく知りたい方は目をお通しください。読み飛ばして、その後の要点からお読みいただいても結構です。
【調査報告まとめ】10歳未満のインターネット利用状況
- インターネット利用率
10歳未満の子供の85.4%がインターネットで動画視聴をしています。低年齢層の子供の74.9%がインターネットを利用し、通園中(0歳~6歳)68.0%、小学生(6歳~9歳)90.0%と近視が始まる年齢では10人に9人がインターネットをしていることになります。
- インターネットの利用内容
低年齢層の子供の利用内容の内訳は、動画を見る(93.6%)、ゲームをする(64.7%)が上位で、やはりYouTubeが人気のプラットフォームです。
- インターネット平均利用時間
低年齢層の子供のインターネット平均利用時間は約2時間5分で年齢とともに増加します。
- インターネットを利用する機器
インターネットを利用する機器は、青少年全体ではスマートフォン(74.3%)、学校から配布・指定されたパソコンやタブレット等(GIGA端末)(69.7%)、ゲーム機(65.9%)、テレビ(地上波・BS等は含まない)(61.1%)、自宅用のパソコンやタブレット等(46.1%)という順ですが、低年齢層に限ると、テレビ(地上波、BS等は含まない)(53.3%)、スマホ(46.2%)、自宅用のパソコンやタブレット等(38.0%)、ゲーム機(35.8%)となります。低年齢層ではテレビが多いもののスマホもかなり使われ始めていることになります。
- スマホ専用率
スマートフォンについては、低年齢層では73.8%が親と共用で利用していますが、近視が始まる小学校低学年(6~9歳)ではスマホ専用率26.4%、つまり、4人に1人は自分だけのスマホを持つようになっています。
子供たちがYouTubeに自由にアクセスする時代
最新の調査結果をみると、小学校に入るまでは、親のスマホかテレビでYouTubeを見ていることがほとんどですが、小学校に入ると4人に1人が自分のスマホを持つようになり、学年とともに増えていくことがわかりました。つまり、小学校に入ると自分のスマホで自由にYouTubeを視聴できるという子供の姿が浮かび上がります。この記事を読まれている親御さんの家ではどうでしょうか?
スマホの長時間使用は近視進行を加速する
YouTubeに限らずスマホを長時間使用すると近視進行のスピードが加速することが報告されています。その理由をまとめてみましょう。
【理由1】スマホは視聴距離が近い
スマホの画面は小さいため、大人も子供も関係なく20cmくらいに近づけてしまいがちです。20cmまで近づけると30cmで視聴した場合に比べ近視が1.5倍以上速く進むと言われています。
【理由2】スマホ依存で減る屋外時間
YouTubeに夢中になると屋外で遊ぶ時間は減ります。YouTubeやゲームに2時間も使うと、屋内生活が中心になります。実は、近視の進行を抑える最も効果の高いライフスタイルは、屋外活動です。1日2時間以上の屋外活動が近視の進行を有意に抑えることが多くの研究で示されています。逆に言うと、屋内生活が中心だと近視進行は加速します。
(参考文献)Outdoor activity reduces the prevalence of myopia in children
アルファ世代の近視事情
スマホの普及によるライフスタイルの変化は、低年齢層の近視進行を驚くほど早めているようです。2010年以降に生まれた世代をアルファ世代というそうです。Z世代の後継です。2024年現在で0歳から14歳にあたります。生まれたときからスマートフォンやタブレットなどのデジタルデバイスが普及している環境で育ち、Z世代と同様にデジタルネイティブとしての特性を持ちます。
インターネット、ソーシャルメディア、YouTubeなどが日常生活の一部であり、デジタルコンテンツへのアクセスが容易になっています。アルファ世代は、2~5歳で約60~80%の子がインターネットを見ています(主にYouTube)。2024年に6~7歳の子供が2歳の時には、スマートフォン普及率は80%を超えていました。
こう見てくると、学校検診で眼科に来る6~7歳の子供は、2歳くらいから親のスマホでYouTubeを見ている子が多いことが浮かび上がります。その親御さんは、ミレニアム世代~Z世代であり、幼少時にスマホは身の回りになかった方がほとんどです。こう考えると、ご両親が近視なら、その子たちは親より強い近視になる可能性が高いと考えざるをえません。
強度近視による将来への深刻な影響
ここで重要な事実は、近視が強くなるほど人生のどこかで失明するリスクが高まるということです。近視が強くて起きる失明は、現在、失明原因の上位5位になっています。これは、近視が強くなると、不便さに苦労するだけではなく、失明という人生を変えるできごとが待っているかもしれないのです。詳しくは、下記の記事を参照ください。
小学校低学年での中等度近視が示すこと
学校検診を行っていると、小学1年生、つまり6歳児で-2~-3ジオプターの子が少なくありません。これは、スマホが普及した時代にYouTubeを見て幼少期を過ごすアルファ世代の特徴と捉えられます。
一般的に近視は5歳くらいから始まり、8歳前後にもっとも速く進み、徐々にスピードはゆるやかになるものの、15歳くらいまで放置できないほどの速さで進むとされています。これは、近視進行の入り口である6歳で既に-2~-3ジオプターの子は、大人になったとき-6ジオプターを超える強度近視になる可能性が高いことが予想されることを意味します。
近視の進行を遅らせる:ライフスタイル改善と予防治療
近視進行の予防は、今からでも遅くはありません。多くの人が近視になる現代において、強度の近視にしないこと=近視進行をスローダウンさせることが重要になります。近年、近視の進行をスローダウンできる方法が次々と明らかになってきました。ライフスタイル改善と近視進行予防医療です。
小学校低学年のお子様を持つ親御様は、ぜひ近視の事実を知っていただき、子どもの近視の進行をスローダウンさせるためにはどんな方法があるかを学び取っていただきたいと思います。小学校低学年のうちが、近視を抑えるラストチャンスなのです。